目の前で泥酔している人を見たら酔えない。山崎文庫の日誌 2020年9月

東京・赤坂(港区)で営業するバー「山崎文庫」。その店主である、山崎耕史氏によるFacebookの投稿をまとめた。文章と写真は、山崎氏の許可を得て転載している。当記事の内容は山崎氏個人の見解である。(編集部)

9/10(木)
医療用マスクですら細心の注意をもって取り扱わなければ感染防止効果はない。一般のポンコツマスクなんぞ何をか言わんやである。感染防止という目的の手段として気休め程度の効果しかない。にもかかわらずそのポンコツ手段を目的化して、マスク着用に狂奔する滑稽極まる奴らがいる。いわゆるマスク警察である。文庫にも先日老婆のマスク警察がきた。この六丁目でも感染者がでた、あなたたち何でマスクしてないのよ、いい加減にしなさい!初沢君は面白がってその老婆を撮った。すると、益々老婆の怒りはヒートアップした。こちらを撮影仕返してきた。最後は本物の警察がきて事なきをえた。こういうマスク警察は異常だが、一般の日本人も同じである。さすがかつて刺突爆雷もって戦車に立ち向かった未開民族だ。マスクなんぞ意味がないとわかっているのに、村八分を恐れ必死でマスクを着用する。バカバカしいにもほどがあるわ!マスクなんぞ糞食らえ!さあ呑むぞー!
皆様、本日初沢くんの展示、一部入れ替え、9月30日まで会期延長しました。私の好きな東京アラートのレインボーブリッジもあります。ぜひご覧ください。お待ちしてまーす。

9/13(日)
昔から坊主が嫌いだ。坊主は世界平和、厄除け開運、無病息災等々を祈願する。アホみたいに念仏を唱える。一体何百年祈れば目的が成就されるんだよ!嘘っぱちもいい加減にしろ!上層部生臭坊主供は、賽銭(賽銭泥棒とは坊主のことだ)だけでなく、お守り、祈祷、お札等々実質効果ゼロの商品を販売して金儲け、税金も払わず、大手銀行や証券会社の儲け話に乗せられて投資し、夜の街で豪遊する。煩悩にまみれて解脱もへったくれもない。だいたいアジア太平洋侵略戦争、対米英戦争にも全面的に賛同しておきながら(口先だけの自己批判したのは一部の宗派のみ)何が世界平和だ!仏法に背を向け王法に全面屈服し、普遍的観点に立脚できず、特殊集団的価値に雪崩をうって追従した。にもかかわらず戦後は何事もなかったかのように世界平和を唱える。モラトリアム中のモラトリアム、生臭坊主供は自分たちが悪を行っている自覚のない、邪悪な詐欺師、戦争犯罪者集団である。お前らにこそ天罰が下されるべきだ。仏教なんぞ糞食らえ。罰当りとでもなんとでも言え!とまあ日曜放言でした!皆様、初沢くんのコロナ写真展、今月末まで開催しております。お待ちしてまーす。
写真は赤坂グラナータイカ墨パスタ

9/19(土)
目の前で泥酔している人を見たら酔えない。ゲロ吐く、喧嘩する、寝る、脱ぐ、セクハラ等々。私も散々やらかしてきた。方々で迷惑をかけた。他人がやらかした時は、自分がこんなふうに酔わなくてよかった。しっかりしなければ、と思うわけだ。これは己の内なる破壊衝動、暴力性の昇華である。今回はたまたま自分じゃなくて他人であった。明日は我が身である。この世は常に何処かの、誰かが巫女となって、破壊衝動の犠牲になるのだから。フロイトは語っている。「無意識的な願望の働きから判断する限り、わたしたちも原始人と同じように殺人者の群れなのである」(「人はなぜ戦争をするのか」)無意識ではいつも自分が気に入らないものを殺しているのだ、と。だから、自殺や殺人に無意識の破壊衝動が反応する。どんな聖人も例外ではない。平和や均衡は常に局所的暫定的なものに過ぎない。
というわけで、皆様、山崎文庫は泥酔、トラブル大歓迎⁉️看板に偽りなし⁉️を目指して今夜も呑んだくれておりまーす!世間は四連休ですが、日曜以外、今夜、月曜日火曜日も初沢君の写真展開催しております。残りわずかとなりました。お待ちしてまーす。
酔っ払い写真は、末光美幸さん撮影。

9/20(土)
先日、初沢君の写真集がFRIDAYで紹介された。その隣のページは美人パティシエが元彼に殺害された記事であった。元カレは深夜、ベランダから元カノ宅に侵入し、バーナーで鍵を焼き切り、23箇所も滅多刺し、殺した。その後、飛び降り自殺した。身勝手な凶行である、とあった。まさしくその通りである。有能な作家が質の高いノンフィクションでも書かない限り、事件は何もかも彼の主体性に押しつけられ、精神障害、絶対悪として断罪されておしまいである。警察の権限を強化しよう云々。一般的には、どうしてそんな凶行が行われたのか、犯人の置かれた通時的共時的な状況、複雑な心の襞を丹念に辿り、冷徹に分析する。重層的、複合的な要因の塊を解きほぐすなんてことはありえない。しかし、これを徹底的に突き詰めると、深い、非歴史的な諦念が訪れる。すべては偶然の積算、邂逅、最終的に必然であった、と。そんなものは自分が被害者の身内や知人友人であれば、到底受け入れがたい結論である。
要するに、寄り添うも地獄、突き放すも地獄である。まさに絶望的だ!とまあ今夜も酔っ払いの日曜放言でした!皆様、明日明後日は4時より営業しております。お待ちしております。

9/29(火)
江藤淳が自殺した時、柄谷行人がこう同定した。「僕はやはり、物書きなんて本当はそういう野蛮な奴らだと思います」(福田和也との対談、文學界1999)人間存在の内なる破壊衝動と対峙するのだから当然である。今回、竹内結子の自殺に関しても同じことが言えるのではないか。やはり役者も「本当はそういう野蛮」さを内に秘めている。死人、犯罪者、気狂い等々の役を命懸けで演じるのだから当然である。我々は物書きや役者の表現を消費して、己の内なる破壊衝動を昇華している。今回の自殺はその最たるものだ。いまだ薬局に行けば化粧品のポスター、本屋に行けば雑誌の表紙に竹内結子がいる。全然ファンではなかったが、彼女の死が当分頭から離れそうにない。心がざわついてどうにもならない。日曜も昨日も飲みすぎてしまった。今夜は竹内結子に献杯だ、呑むぞー!
皆様、初沢君の写真展、いよいよ今日明日で終わりです。お待ちしてまーす!
写真は2軒隣、ビストロKのポークソテー、出前できます。

■先月

己も含めて日本人は摩訶不思議な民族である。8月だけ戦争についてやたら云々する。山崎文庫の日誌 2020年8月

■次月

大酒飲みを沢山見てきた。彼らには大別して二つの型があると思う。山崎文庫の日誌 2020年10月


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