【12/12更新】ポンコツ金融時代、女と酒に溺れた。トラブルだらけだった。山崎文庫の日誌 2021年11月

東京・赤坂(港区)で営業するバー「山崎文庫」。その店主である、山崎耕史氏によるFacebookの投稿をまとめた。文章と写真は、山崎氏の許可を得て転載している。当記事の内容は山崎氏個人の見解である。(編集部)

11/6(土)
人は正しいものを強くできなかったので、強いものを正しいものとした(パスカル『パンセ』第五篇より)グローバリズム専制の今日にもあてはまる金言だ。強いもの=利益中心主義、わかりやすさ(過度の単純化)、短期的成果、多数の支持、承認(フォロワー数、再生回数、クリック数)等々、定量的、短期的価値が過剰に正当化されている。こうした思考範型、パースペクティブそのものに疑義を抱くべきではないか。
見せかけの多様性の中で、益々画一化、均質化に拍車がかかっている。なーんて抽象的なことを言っても意味がない。問題は我々の実生活にある。Hollywood映画見て、
Macdnard食べて、iPhone持って、Google検索して、YouTube見て、Amazonで買い物して、
Facebook、Twitter、instagramに依存する。これらに疑義を抱けば、すべて放棄できるのか?漸次的に撤退など可能か?(手段の目的化=修正主義)もう骨の髄までグローバリズムに侵されているのだから、あらゆる抵抗(口先だけの米帝打倒)はファンタジーにすぎない。とりわけモラトリアム国家日本においては!まさに絶望的である。というわけで呑むしかない!
皆さま
フクサコアヤコ写真展『妄想文庫』開催中です。松田聖子聴きながら、呑んだくれてお待ちしてまーす。

11/9(火)
先日、某大手出版社の新入社員がきた。カウンターに平積みの『探究II』を前にして、こんなやりとりがあった。()内はこころの叫び。
新入社員
「この本読んだことないです」
私 
「えーー!」(まあ『日本近代文学の起源』くらいは読んでるのだろう?)
新入社員
「この人自体知らないです」

「ええーーーー!!」(てめえ俺のスーパースター、永遠のアイドル、不滅のカリスマを知らないだとーーー!)
この世の終わりを感じ、深く絶望した件でした。というわけで呑むしかない!
さて、皆様今週もフクサコアヤコ写真展「妄想文庫」開催中です。お待ちしておりまーす。

11/12(金)
二十歳の頃、グールドバッハエディションを全部買った。自宅ではオーディオで、外ではMDに録音して気狂いのように一日中聴いた。聴きすがった。生きる糧であった。「フランス組曲」「ゴールドベルク」(54年版)等々。しかし、今聴きたいとは思わない。47歳の今は松田聖子である。
無限ループ再生しても聴き飽きない!病んでるのかな?保守化した?日本人の最大公約数、普遍性に到達した国民歌手、息継ぎが超絶うまい、とか勝手に云々しながら毎日かけてます。皆様、松田聖子聴きに来てください!お待ちしてまーす。フクサコアヤコ写真展開催中。

11/17(水)
昔、NHKの番組でイギリスの老舗パブを紹介していた。その店では、他の作業は従業員に任せてもトイレ掃除だけは店主自らやる。それが強烈に印象に残った。私も呑んでばかりいないで、もっとトイレ掃除を励行しなければ!というわけで、先日移転時そのままにしていたトイレのボロい壁紙を張り替えてもらいました。絶望とは無縁な感じの黄色です!皆さま、ぜひご覧ください!お待ちしておりまーす。さあ呑むぞー!
フクサコアヤコ写真展示「妄想文庫」開催中。(11月30日まで)

11/19(金)
若さを羨望する言葉を耳にする度、つくづく思う。二度と若い頃に戻りたくない。来年48歳、過去のどの時代も幸せだった、と振り返ることができない。思い出すと羞恥、後悔、反省、懺悔のオンパレードである。無論、嫌なことばかりではなかった。しかし、過去を暴力的に悲劇化や美化するのは非歴史的な回顧である。では今が幸福なのか、だからそんな悠長なことが言えるのかと言われたらどうか。もがき苦しんで均衡、心の平静に到達したとでも言うのか。この先、またいかなる苦悶が待ち構えているか、わからないではないか。なーんて言いながら松田聖子を聴きすがり、呑んだくれる日々です。
皆さま、フクサコアヤコ写真展「妄想文庫」開催中、お待ちしてまーす。

11/26(金)
カウンターに並べた本を見て、本が好きなんですか?
これ全部読んだんですか?
という愚問をしばしば浴びる。ただの飾りです、と答える。無論、私も読書によってもたらされる快楽、昂揚感、熱狂、現実逃避を否定しない。しかし、定量的に言えばその百万倍苦痛を持って本を読んだ。生きるか死ぬかで本を読みすがってきたのである。そして、己の生きる糧となった、己に新たな現実を見せつけてくれた、己を形成した本の一部を曝け出しているのだ。お遊戯で読んできたんじゃねえんだよーーー!!て叫びたくなる。愛憎入り乱れる、解放と苦悩、救済と混乱が混在する、それが読書というものではないか!なーんて金曜放言でした。皆さま、フクサコアヤコ写真展、来週30日までです。赤いスイートピー無限ループ再生しながら、呑んでお待ちしてまーす。

11/28(日)
ポンコツ金融時代、女と酒に溺れた。トラブルだらけだった。昼間は高級ソープ(吉原、川崎琥珀、ラグジュアリー)、高級デリヘル(ジークス、マダム麗奈、輝き、アネモネ等々)、デートクラブ、夜は六本木のキャバクラ(グランクリュ、ステラ、チック、テオス、NEWS等々)通いに明け暮れた。当時、そんな荒んだ己の魂を浄化したい、と思って読みすがったのが後期庄野潤三であった。それは肯定、感謝、歓喜に満ち溢れた身辺雑記であった。政治的問題、否定的で暗鬱、憤怒また卑猥な事柄は微塵もない。自分もかくありたい、と庄野の牧歌的生活に憧れた。読売ランドのご自宅の表札を見に行った。大久保くろがねも行った。
しかし、今思えばむしろ庄野こそ狂気であったのだ!プールサイド小景、静物を書いた男が丸くなった、と思うこと自体ナンセンスである。浅はかであった。改めて庄野潤三に敬意をもって諸著作を読み返したい!なーんて日曜放言でした。

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