【1/2更新】破滅型の人間に魅かれる。自分が小心、軟弱で、意気地なしだから。山崎文庫の日誌 2021年12月

東京・赤坂(港区)で営業するバー「山崎文庫」。その店主である、山崎耕史氏によるFacebookの投稿をまとめた。文章と写真は、山崎氏の許可を得て転載している。当記事の内容は山崎氏個人の見解である。(編集部)

12/2(木)
明日からジュリアンレヴィ&森康志写真展開催します。12月3日から12月25日まで。其々写真集も販売しております。
トイレには森さんの愛猫ハットリ君がいます。皆さま、ぜひご覧ください。
ちなみに松田聖子はしばらく封印致します。キースジャレットトリオ1999年パリコンサート『whisper not』かけて、お待ちしてまーす!

12/3(金)
先日、お客様に八重洲はし本で鰻をご馳走になった。10年ぶりくらいの訪問であった。鰻もよかったが、何より感動したのは箸である。割り箸ではなく、最初から二つに分かれた使い捨て箸だ。何せ持ちやすく、自分の指、手、腕と一体化したかのようであった。この箸を使えばまずいものもうまく感じるのではないか、と錯覚するほどである。
その時、若い頃にも一度〝箸熱〟にかかったのを思い出した。どこかの料理屋で箸に感動した。聞けば京都の老舗、市原平兵衛商店のものだという。早速、大量に買い求め、友人知人親族に送りつけ、行きつけの店に置かせてもらった。今思えばお恥ずかしい限りである。今回は箸の仕入れ先を教えてもらえなかった。よって、持ち帰り、洗って持ち歩いている。箸箱はカラコロうるさいので、紙の箸入れを大量に買ってきて。とまあ、くだらない金曜小話でした。
皆さま、本日よりジュリアンレヴィ&森康志写真展はじまります。お待ちしてまーす。さあ呑むぞー‼️

12/11(土)
破滅型の人間に魅かれる。自分が小心、軟弱で、意気地なしだから。己の内なる破滅願望を昇華してくれるからだ。
訳あって長く同居した女性がいた。ロシア人であった。四年前の八月、四十三歳で死んだ。肝不全であった。彼女は朝から晩まで豪快に呑みまくった。結果、腹水、黄疸、喀血、肝性脳症、γgtpは2000を超えた。入院して一時的に回復した。が、再び酒に溺れた。私は必死で断酒を促し、部屋中の酒を捨てたが、彼女は隠れて酒を煽った。死ぬ気で呑むとはどういうことか、まざまざと眼の前で見せてもらった。抽象的にいえば、彼女は私の身代わりに死んだのだ。今でもストロングを開栓する音が時々聞こえてくる!お前、ちびちび呑んでんじゃねえよ、と。
しかし、こちらは今夜もちびちび柔な呑みに入りまーす!
皆さま、ジュリアンレヴィ&森康志写真展、25日まで開催しております。お待ちしてまーす!

12/15(水)
昨夜、突然小学校(名古屋大磯小学校)の同級生が訪ねてきた。小六で名古屋を離れて以来、三十五年ぶりの再会であった。住んでたマンションも同じ、野球部ではずっとチームメイト、両親同士も親密であった。が、私達は決して親友というほど個人的な付き合いはなかった。名古屋を離れて以来手紙はおろか電話もメールもしたことがない。それなのに、いきなり尋ねてきたのだ!驚きであった。昔話に花が咲いた。人間てこんなに細かいことまで記憶しているものなのか、と己自身に驚いた。それにしても、あまりに私は酔いすぎていた。連絡先すら交換しなかった。まあ今度はこちらが調べていきなり名古屋を訪ねよう!!皆様、ジュリアンレヴィ&森康志写真展25日まで開催しております。お待ちしてます。また、初沢君の最新写真集も近々販売開始します!

12/17(金)
本日、山崎文庫は六周年を迎えた。お世話になった様々な方々に感謝したい(とりわけ沢山大切な人を紹介してくれた初沢君の貢献に)。今や袂を分かち、互いに憎悪の念をもつに至った元相棒にもだ。六年前、元相棒とすき焼き屋をはじめた。山崎文庫は洒落にすぎなかった。最近、よくコンセプトは何かと聞かれる。そんなもの何もない。ただ、押入れへ乱雑に放置していた蔵書をカウンターに並べてみただけである。立看板に「絶望は無料です」と書いてみただけである。何か知的、文化的、政治的、宗教的なものを企図したわけではない。元相棒が女と酒に溺れて蒸発し、一人になり、すき焼きをやめ、文庫だけが残った。それが実情である。よって、元相棒は山崎文庫が成立する過程でいわゆる「消滅する媒介者」(ジェイムソン)の役割を果たした。彼が蒸発してくれたからこそ現在の均衡状態があることを忘れまい。
そして、最後まで創成記を捏造しない。今後も山崎文庫はいわゆるコンセプトをもたない。ただ、様々な絶望の交差点であればいいと思う。絶望者たちが激闘する場であればいいと思う。これをコンセプトというのだろうか?皆様、今後とも宜しく御願い申し上げます。さあ今夜は呑みまくるぞー‼️写真は初沢君撮影、六本木時代。
ジュリアンレヴィ&森康志写真展25日まで開催中。

12/27(月)
本日より舞山秀一写真展を開催致します!
12.27—1.29まで
舞山さんがローマ、南仏、ベルリンで撮影されたかっこいいモノクロ写真群です。
年末年始の営業のご案内。
12月27通常営業
28通常営業
29通常営業
30通常営業
31お休み
1お休み
2お休み
3未定
4通常営業
皆様、本年も大変お世話になりました。来年もよろしくお願い申し上げます。
呑んだくれてお待ちしてまーす!

12/29(水)
坂部恵はかつて仮面と素顔の二元論を破壊した。仮面の背後に素顔はない。そんなものは幻想である。様々な素顔のない仮面、仮面のない素顔が混沌としてあるのだ、と。(『仮面の解釈学』)
同様に、素面と泥酔の二元論も破壊すべきではないか。ひとは大抵、酔った人間の言葉を本音が出たと見なす。しかし、本音なんてものは幻想にすぎない。この世には本音のない素面と泥酔、本音だらけの素面と泥酔があるだけである、と。泥酔した暴言も本音なら素面の綺麗事も本音である。逆もまた然り。とまあ、酔っ払いの自己弁護でした!さあ年末だ、呑むぞー!!皆さま、舞山秀一写真展開催しております。
2021.12.27—2022.1.29まで
お待ちしてまーす!
年末年始の営業のご案内。
12月29通常営業
30通常営業
31お休み
1お休み
2お休み
3未定
4通常営業

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【12/12更新】ポンコツ金融時代、女と酒に溺れた。トラブルだらけだった。山崎文庫の日誌 2021年11月

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