カツ丼野郎

「こんなところで働いてるんだ。周りに店屋が何もないね。昼飯はどうしてるの。弁当をもってきてるの」
「いや、裏手にコンビニがあるからね。そこで買ってる」
「今日は何食ったの」
「カツ丼だよ」
「昨日は」
「昨日は冷やし中華だったよ」
「その前は」
「その前は……カツ丼だったね。それがどうしたの」
「その前は」
「もう覚えてないよ。いや、マーボー丼だったな」
「その前は」
「その前は……カツ丼だったよ。なんでそんなことを聞くの」
「2日に1回はカツ丼を食ってるね。カツ丼が好きなの」
「言われてみれば確かにそうだな。好きってわけでもないんだけどね。だからなんでそんなことを聞くんだよ」
「なんで好きでもないのに2日に1回はカツ丼を食うの」
「なんかこう、手ごろな感じがしてつい手に取っちゃうんだよ。丼ものだから手早く食べられて、腹にも溜まる感じが良いんだろうな。こんなこと、誰が知りたがるんだよ」
「カツ丼の翌日は違うものを食べるんだね。どうして」
「弁当売場にいくと、まずカツ丼に目がいくけどね。手に取る寸前で、昨日食ったなって思って違うのにするんだよ。だから、それがどうしたんだよ。仕事のことを聞けよ」
「で、翌日はまたカツ丼に戻る?」
「そう。基本的に、最初に手が伸びるのがカツ丼だから。昨日別の食ったから、今日はこれでいいやって。いいかげんにしろよ。こんなの記事にならないだろ」
「いやなるよ」