コロナ影響下のライブ配信について。Matt Ketchum氏(Kaala、Worship Pain)へのインタビュー

ご存知の通り、コロナ騒動によって様々な問題が噴出しているわけですが、私個人は、今まで月に数回足を運んでいたライブに行けなくなったことが想像以上にストレスとなっています。日々の心労というのは酒飲んで大音量の音楽に身をまかせてるだけで(ある程度)薄れるものなんだな……。

そんな中、多くのライブハウスやバンドがライブのストリーミング・サービスを開始。

私も去る4月25日土曜日に初めてライブのストリーミングを視聴。
出演していたのは、3月22日に2ndアルバム「Roman Holiday」をリリースしたばかりのドゥーム/スラッジ・バンドFloaters、収録会場は、そのFloatersのホームともいうべき西横浜El Puente、配信を担当したのは、日本のアンダーグラウンド/エクストリーム・ミュージックを海外に伝える活動をしているウェブジン「Kaala」

ストリーミング自体はテストも兼ねて行われたものだったため、1曲約5分で終了。価格は500円。尺と自分が用意した酒の量以外は概ね満足のいく内容でした。
今週金曜、5月15日に同チームによる“本番”、フルセットでのストリーミングが控えており、期待が高まっています。

コロナ・ナイッツ Vol. 1 Floaters フルセット @ El Puente

コロナ騒動以前、少なくとも自分が足を運んでいるライブハウスやバンドがライブをストリーミング、配信した、という話は聞いたことがありませんでした。雑談の中で「こういうのやったらいいかもね」、なんて話が極たまに耳に入ってくるぐらいだったかなと。
この試みが成功し、収益をあげられると分かれば、この騒動が終わった後も続いていく可能性があるのではないでしょうか。

そこで、「Kaala」の運営メンバーであり、東京のブラックメタル・バンドWorship Pain(こちらも2月にアルバムをリリース済み)のメンバーでもあるMatt Ketchum氏に話を聞きました。(聞き手・加藤隆雅)

――大変な状況の中、インタビューに応えていただきありがとうございます。はじめに、今回のコロナ・パンデミックによって貴方と、周りのコミュニティにどのような影響があったかを教えてください。

今のところは、ちょっと変わった経験をしている、という感じです。
本職ではリモートワークをしています。これは歓迎すべきことですが、要請されてやっていることなので、いつでもそうしたい時にできる、というのとは少し違いますね。

時々、暇つぶしと運動を兼ねて、あと気が狂ってしまわないように、マスクをして自転車で街中をうろついたりもしています。車がほとんど通らない昼間の渋谷や銀座を走るのは、ちょっとシュールですね。

私は家族のことを心配しています。昨年末にミシガン州北部に引っ越してきたばかりで、今年の2月くらいに父が早期癌と診断されました。手術は4月に予定されていましたが、病院が混雑していて延期になりました。最後に病院に確認した時は予定を変更できそうだったのですが、少しの間静かにしていたので、今どうなっているのかはわかりません。

2019年10月くらいからWorship Painと一緒に練習やライブをしていたのですが、ライブハウスが閉鎖されてライブもキャンセル、今では一緒に練習するのも不可能に近く、何も動いていない状態です。

――4月25日に、テストも兼ねたストリーミングを行いましたが、手応えなどはありましたか?

ありましたよ!ほとんどのフィードバックはとてもポジティブなものでした。1人だけログインできずに見逃してしまった人がいたのですが、それ以外はとてもスムーズに進みました。

最大のフィードバックは、これがいかに効果的であったかに驚かされたことです。5分間の動画で18,900円の収益を上げることができました。当初、収益の分配は、Floaters 35% / El Puente 35% / Kaala 30%の予定だったのですが、Floatersから「自分たちの分はEl Puenteに分けてほしい」と言われたので、El Puente 70% / Kaala 30%という分配になりました。

短いストリーミングでこれだけの金額を集められたことに多くの人が驚いていましたし、私たちがやろうとしていることが、最小限の機材でもうまくいくことを示していると思います。

――このようなストリーミング・サービスは、以前から構想があったのでしょうか。あるいは、今回初めて挑戦したのでしょうか?

以前からこのようなことをやりたいと思っていました。覚えている人もいるかもしれませんが、「Kaala Radio」というポッドキャストをしばらくやっていました。それをさらに一歩進めてビデオにしたいと思っていたのですが、技術的な問題があると思われていたため、実現しませんでした。

――ストリーミングを行うにあたって、何か具体的に調整(バンドやライブハウスとの間で、または機材など)は行いましたか?

作業を進めているうちにわかってきたことは、観客のいないストリーミング・コンサートでは、「コンサート」という形式を自由にいじくりまわすことができるということです。

バンドのパフォーマンス自体はあまり変わりません。空いているスペースに通常より多くの機材を用意しても良いですが。

ライブハウスは何も売ることができないので、これは最悪ですね。閉鎖期間中の音楽シーン全体で最も難しい部分だと思います。ライブハウスはレンタルスペースで、多少のマーチがあるのを別にすれば、ほかに何もないのが普通です。

「伝統的」なライブハウスのやり方はパンデミック期間中では機能しませんが、観客へアプローチできる、より持続可能な新しいライブハウスの使い方があると思います。

頭に浮かぶのは、あの場にいた人たちとのやりとりで、まるでシットコムのような感じでした(笑)。バンドがプレイして、ライブハウスがホストをしている、まあ普通のことなんですけど、みんなでアイデアを出し合ってビデオを作るというのは本当にクールなことですよ。

前回の例を挙げると、カメラを回しながらEl Puenteの周りを歩いていたら、フロントドアに「できれば、お札じゃなくてコインで払ってください」みたいな看板があるのに気づいたんです。それからMossaが、「PNQがまたドアのところで現金を受け付けているはずだから、本物のコンサートに入ってきたように見えると思うよ」と言ったので私が看板のことを言ったら、私がお金を払う体で、バカみたいに小銭を投げつけて、PNQにそれを数えさせたら面白い絵になるだろうとみんな思ったんです。最終的には、私はちょっと失敗して、PNQに100円玉10枚をただ渡しだけになってしまったんですけど、彼の演技が上手くて、拾い集める姿をイイ感じに見せてくれたんですね。

うまく説明できなかったかもしれませんが、私が言いたいのは、「コンサート」を撮影する準備をしているときに、音楽を中心とした奇妙で創造的なアイデアを思いついたということです。

それがフォーマットをいじくりまわすという点に繋がっていきました。確かに、ドラムキットやアンプなどがあって、その角度から見ると、観客がいないだけで通常のコンサートと変わりません。

でも、この観客のいない広い空間で、「何か」ができるはずです。

無観客であることによって、バンドや会場にとって収益になり得る、面白くて、ユニークで、意味のあるコンテンツを作るための新しい可能性が開けてくるような気がしてきました。

――ZAIKO(ストリーミング・サービス)での視聴方法を教えてください。

システムの仕組みは以下のようになっています。

・(ZAIKO内の)私たち(Kaala)のページにアクセスし、チケットを購入します。
・購入後に届くメール内のリンクをクリックすると、ストリームのページにアクセスできます。

一部のブラウザは、他のブラウザ(Chrome)では再生をクリックする必要があったところ、ストリームが自動的に開始されるようになっているようです。
まだ完璧ではありませんが、良い方向に進んでいます。

私たちはより多くの人に気軽にコンサートに参加できるようにしたいと思っていますし、何か良い方法を知っている方、経験をお持ちの方がいれば、ぜひ話を聞かせていただきたいです。

コロナ・ナイッツ Vol. 1 Floaters フルセット @ El Puente

――開催場所である西横浜El Puenteと、出演バンドFloatersについて教えてください。

どこから始めようかな! ShiggyとEl Puenteとは、たぶん2011年の10月から知っています。目黒でバーテンダーをしていたこと、Metallicaのカバーバンド、そして「マスター」という男のことなど、長くなりますが、ここでは割愛させていただきます。

El Puenteは、東京にたくさんある素敵な会場の中でも、本当に宝物のような場所です。元々はスペイン料理のレストランでしたが、数年前から100% DIYのイベントスペースに改装されています。

壁に描かれたグラフィティ、ショーに来る人々の絶え間ない流れ、El Puenteの「ブランド」が年々国際的に拡大していることなど、進化していく様子を見られる、というのも魅力のひとつです。素晴らしい音楽と素晴らしい人々を惹きつける唯一無二のスポットです。

しかし、本当の魔法はここを運営する人々によって作られています。言葉では言い尽くせないほど素敵な人たちで、音楽への情熱と、その一部である人々への愛に溢れています。スタッフのおふざけ、Shiggyのやかましい笑い声、PNQ and Citizens、時折行われるThrash Zone(編注:横浜のクラフトビア・バー)とのタイアップ、そして想像しうる限り最も窮屈なクラウド・サーフィング。El Puenteは音楽と同じぐらい、人々の力によって楽しい場所になっています。だからこそ、僕らはEl Puenteが大好きです。

右:Shiggy氏

Mossa(FloatersのBass/Vokills)とは2012年11月頃からの知り合いです。私の記憶が正しければ、Darkcorpseで出演したオレンジカウンティ・ブラザーズでのライブに、Mossaの別のバンド、Inside Charmerが出演していたのですが……。

Holy Shit……あったぞ。
http://insidecharmer.blogspot.com/2012/07/0901-orange-county-brothers-veritas.html

「Mossaの別のバンド」というのは、彼が常に活動を続けていて、私の好きなバンドのいくつかでプレイしてきたからです。Inside CharmerRedwood BluesNepenthes、Floaters。彼はFloatersでも、El Puenteで働いていても、Thrash Zoneを手伝っていてもーーKaalaのクレイジーなアイデアに賛同してくれている時でさえもー、シーンに愛情を持って恩返しをしているドゥーム・マシーン(間違いなく私が最も傾倒しているジャンル)です。

私にとって、彼とFloatersのメンバーは、アンダーグラウンドのサウンドだけでなく、その背後にあるエートスや哲学を、オープンなマインドと冒険心を持って支持している人たちです。彼らのように献身的で親切な人々を知ることは本当に感動的なことです。それに、彼らは私の思うEl Puente Doom Ensembleに最も近い存在でもあります(笑)。

Floaters

――コロナ収束後も継続してライブのストリーミングを行う計画などはあるのでしょうか。

もちろんあります。多くのバンドやライブハウスは “通常”の時でも苦労しています。

ストリーミングの第一の目標は、シーンのバンドや会場に信頼できる収益源を提供して、コロナ影響下での活動を支援することです。その結果、私たちが一緒に活動しているバンドや会場が国際的に露出することにもつながるはずですが、何も約束はできません。

長期的な目標としては、El PuenteやMoonstep、What’s Upのような会場に、チケットやビール、マーチャンダイズの販売に加えて、持続可能な収益源を作るためのツールを提供することです。それがどのようなものかというと、以下のようになります。

例:
会場Xの定員は100名。地元の人気アクト2組と海外のメジャーアクト1組を横浜の木曜の夜にブッキングし、海外アクトのツアーのオープニング・ギグ(2,000円)として、金曜日の新宿公演の前日夜に行いました。

しかし、月曜日に新宿会場近くの水道管が壊れ、新宿公演は中止となり、木曜日の夜の横浜公演への関心が急に高まりましたが、またしても100人しか収容できないとのこと。

ストリームなしの場合:
会場Xは100枚のライブ・チケットを販売。最大収益は2,000円×100=20万。

ストリームありの場合:
会場Xでは100枚のライブ・チケットを販売しているが、ライブストリームを1ビュー500円で設置し、海外のバンドの宣伝努力によって2,000枚のストリーム・チケットを販売している(この公演は東京で唯一のライブとなっている)。wifi、カメラ、オーディオシステムはすでに設置済みであることを考慮すると、追加の労力はほとんどなく、会場の利益は100万円(500円×2,000)になる。

これがKaalaの思い描く未来です。

――まだ先が見えない状況ではありますが、この先の予定や展望、読者へのメッセージなどありましたらお願いします。

資金調達のために、Bandcampにオーディオ録音をアップすることを計画しています(ファンによるカスタム・アートワークもあるかもしれません)。

コロナ影響下の期間中、空いている会場で録音されたライブをストリーミングで流すというのは、3段階のメディアプランの第一弾で、最終的には……まあ、それは秘密で。それには日本の田舎、バーベキュー、メタルヘッズによるキャラバンなどが含まれています。詳しく知りたい人は直接私に連絡してください。

メッセージ?うーん。ちょっと考えさせてください。

シーンというのは常に一種の魔法のようなDIYの場所で、世界中の人々が集まり、お互いに助け合い、限られた資源で作られた奇妙な芸術を探求しています。この活動は関わる人々に、強い共感、創造性、好奇心、自信を与えてくれます。

音楽やアート全般、特に「アウトサイダー的なもの」は、常にそのような共同体的な側面に頼ってきたからこそ、優れた人々やムーブメントを生み出してきたのです。

まあ、今はすべてがクソになってきていて、多くの人は快適であることに慣れ切ってしまっていますが、国際的なインディペンデント、“エクストリーム”な音楽の “シーン”だからこそ、この災害にポジティブに対処して、より良い世界を作ることができると信じています。その世界がどのようなものかはまだわかりませんが、焚き火があって、空気が澄んでいて、大音量のリフに合わせて輪になって汗だくで走り回っている人たちが一体となって喜びを叫んでいるような世界であってほしいと願っています。

以下のことを心に留めておきたいですね。時々は困るようなことがあっても、きっと大丈夫。他の多くの人も同じように感じているはずで、時に誰かを助けるために必要なのは「こんにちは」と挨拶することだけ。そして、大音量の音楽とサークルピットは、優しさ、連帯感、お互いを支え合うことについて、想像以上に多くを教えてくれていた、と! #CirclepitsForHumanity

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  1. ピンバック: test | Tranquilized Magazine

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