【Index】
その37-山口百恵「パールカラーにゆれて」(1976)
その38-English Dogs「Invasion Of The Porky Men」(1984)
その39-Apologist「Violation 666」(2025)
その40-B’z「The Circle」(2005)
その41-Epidemic「Exit Paradise」(1994)
その42-The Enid「In The Region Of The Summer Stars」(1976)
結局、半ばルーティンのエクササイズ化しているこのコーナーを、今年も細々と継続することにした。
取り扱う音源について、たまに「ヘヴィメタルじゃねえじゃん」とか言われるのですが、このコーナーの趣旨は「ヘヴィメタルを紹介するもの」というよりは、10代からヘヴィメタルにどっぷり漬かったせいでどうしても感性が良くも悪くもヘヴィメタル的な方向に寄ってしまっている私が、(大体)金曜夜に色々なCDを車で聴いては、私の中にあるヘヴィメタル的感性をもってアレコレ言うものとして再定義したい。言ってしまえば、「金曜夜のヘヴィメタル」とは私自身のことなのであります。
その37-山口百恵「パールカラーにゆれて」(1976)

10枚目のアルバム。
黄金期の百恵ちゃんは、メイン・ソングライターの1人がダウン・タウン・ブギウギ・バンドの宇崎竜童氏であるという点をとっても正しくロックンロール・アイドルであり、私が日々探究してはNightwingsを通じてアウトプットする我がロックンロール道のなかでも最重要アーティストの1人に挙げられる。
まあこのアルバムに関しては宇崎度は低めではあるが、佐瀬寿一氏の手による標題曲をはじめ、しなやかで爽やかな彼女のもう一面の魅力が溢れた名盤といっていいだろう。
しかし、本作の時点で百恵ちゃん17歳とは! 信じられない色気である。同じアイドルという言葉で言い表されはしても、後世のキャピキャピ/萌え萌えキュンキュン(恥)したものとはジャンルが、アーティストとしての種類が、まったく違うと言わざるをえない。ただこの唇は石原さとみ氏に受け継がれているなあ(カ?)。
ちなみに本作をかけているとき、私は静岡・清水市を車で走っていた(夜ではなかった)。旅先の海沿いの街で聴く百恵ちゃんがまた旅情を運んできて良いのだけど、そういえば清水市を舞台とした「ちびまる子ちゃん」にもしばしば百恵ちゃんが出てきたなあと、ちょっとしたシンクロニシティを感じていたのであった。(1月2日)
その38- English Dogs「Invasion Of The Porky Men」(1984)

イギリスのハードコアパンクバンドの1st。
パンク的な出自でありながらメタルとも親和性の高いサウンドが、後世のメタルパンク的文脈から「渋さ」として参照されることの多いバンドで、私もWitchslaughtで活動中にそうした文脈から手にした。
後の作品の方がNWOBHM~スラッシュメタル的意匠をより明示的に取り入れていると思うけど、本作も初期ハードコアパンク的な衝動のなかにMotorhead、The Damnedのロックンロール感や、Demon PactのようなカルトNWOBHM勢が匂わせていた原始ハードロックの燃え殻の燻りを漂わせている点が激渋。というか個人的にはこのくらいのバランスが気持ちいいかも。(1月9日)
その39-Apologist「Violation 666」(2025)

Apologist「Violation 666」(2025)
東京を拠点に活動するブラックメタルバンドの6th。
個人的な懺悔からお話しすると、私が2018年末に上梓したディスクガイド『Vintage and Evil』で彼らの1stを取り上げた際、誤って2ndのジャケットを掲載してしまった。そのことをヴォーカリストであるReezi Godkiller氏のSNS投稿で知った私は、すぐさまDMおよび同氏のSNSタイムラインにおいて謝罪し、訂正文を自らのSNSに掲げた。Reezi氏は寛大にも私の過ちをお許し下さり、さらにはSNSでも繋がって下さるという懐の深さを示して下さった(改めまして、あの時は誠に申し訳ございませんでした)。
そんなReezi氏から、昨年末にApologistがリリースした最新6thをご恵投頂いた。ならば私は、汚名返上ではないが、改めて感想文をSNS上に投下することをもって同氏の想いに報いたいと思う。
などと書くと、上記の「ジャケ間違い」の経緯もあるから、この文章が「提灯記事」なのではないかと訝しむ向きもあろう。心配はご無用である。もともと『Vintage and Evil』で取り上げていたのも、私の自由意志に基づくリスペクトからであった。そして今作「Violation 666」を再生し、いきなり飛び出してきた冒頭曲〝Sodomizer〟(MVもある)には、軒下にぶら下がった「不浄な提灯」など一瞬で吹き飛ばすほどのパワーがあった。さらに、私はあえて、彼らの音楽に対する私の勝手な解釈を虚心坦懐に綴ろうと思う。それが彼らの自己認識と異なる場合のお叱りはいつでも受ける覚悟である。
まずApologistの音楽に一貫して言えるのは、ブリザードのような演奏に背徳のメロディを織り込んだファストで暴力的なブラックメタルであり、かつReezi氏の特異なヴォーカル・スタイルが耳を引くということ。ブラックメタルのヴォーカルといえば、一般的には金切り声やかすれ声、デスヴォイスといった、人間味(或いは肉体性)を排除して質量のない邪悪な霊魂が慟哭しているようなスタイルがしばしば採用される。一方でReezi氏のそれは、具体的な質量を伴った肉体から押し出されていることを感じさせる、まさに「肉声」と呼ぶべきスタイルだ。
私は約7年におよびReezi氏とSNSで繋がらせて頂いたことによって、そうした同氏の表現の駆動エンジンであろうパトスの一端に文章を通じて触れ、この「肉声」に対しても、『Vintage and Evil』執筆時よりも解像度の高い一定の解釈をもつに至った。
なお、バンドマンの中には音楽活動モードの「オン」と平時の「オフ」を厳格に使い分けている人も多いため、個人的なSNS投稿をその人の表現活動に安易に結びつけて書くことを場合によっては避けるのだが、Reezi氏の場合は常在戦場というか24時間365日ほとんど〝Godkiller〟であり続けていることが伺える(何しろ投稿のほとんどが「HAIL SATAN!」で締められ、揺るぎないアイデンティティが示されている)から、今回は拙文においても参考にさせて頂きたい。
Reezi氏はSNS投稿において、反キリスト的な「七つの大罪」にしばしば言及し、とくに貪食や色欲といった獣欲を明け透けな言葉で吐露している。それらがキリスト教的世界観における「罪」の概念と密接な関係をもつ「肉体」と不可分なパトスであるという点からしても、同氏のヴォーカル・スタイルが極めて強く肉体性・身体性を感じさせる「背徳的な肉声」ともいうべき表現をとることは、必然的な帰結ではないかと思われる。
また多くの曲が2~3分程度のコンパクトさでまとめられている点には、Reezi氏がしばしばSNSでリスペクトの対象として挙げているMotorheadやKreator(初期のスタイル)といったバンド群の音楽との連関を読み取ることができる。こうしたバンド群が暴力的・衝動的なパトスを極めて巧妙に、古典的なロックンロール・ナンバーのランニングタイムの中でまとめ上げる編集手腕を、Apologistの創作における方法論にインストールしているものと思われる。
「短くて速い曲」が満載といっても、そうしたスタイルをとるバンドにありがちな「全曲同じに聞こえる」という陥穽にはまっていないところが彼らの心憎いところだ。各曲に印象的なシンガロングやフレーズを配してフックを満載している。とくにギターの時に不気味な、時に美しいフレージングの妙が良い仕事をしており、ミドルテンポのナンバーも交えたドラマティックさで全13曲を駆け抜ける。
ジャケットには4人の悪魔戦士(これがまた非常に肉感的なビジュアル)が、おそらくは現メンバーの一人ひとりを模したものとして描かれている。これは、メンバーチェンジを経て到達した現編成への、バンドとしての自信の表れであろう。(1月16日)
その40-B’z「The Circle」(2005)

14th。
初めて真剣に追いかけたアーティストはB’zだった。
小6の終わりに遅まきながらJ-POPを追いかけることに目覚め(それまで音楽に一切関心なし)、中学で友人からバンドに誘われ、彼らに薦められるままにGlayやラルクなんかを聴いていた中にB’zはあった。ブックオフで購めたシングル「ねがい」で開眼し、当時(1999年頃)出ていたシングルとアルバムのすべてをブックオフで買い集めた。満を持してリアルタイムで接した最新アルバム「Eleven」(2000年)にガッカリし(前々作「Survive」~前作「Brotherhood」あたりで姿を現し始めたヒネクレメロディが全開の作風が嫌だった)、その頃はすでに洋楽のハードロック/ヘヴィメタルにも開眼していたから、ここでB’zを追いかけるのは止めた。
大人になってから時々行う、「ある時期まで追いかけていたアーティストのその後を辿ってみる運動」のなかで00年代以降の彼らの作品にちょこちょこ触れてみてはいたが、サラっと聞き流して終わりになってしまい、いまいち自分の脳内の「B’z地図」がキチンと更新されていかない(アルバムのリリース年や順番も覚えられない)歯がゆさを感じていた。それが、俺の感性がB’zの音楽に合わなくなってしまったためなのか、はたまた00年代以降のB’zの音楽の方に何らかの原因があるためなのかは、聴き込みが足りてなさ過ぎてよくわからない。
そんななか、最近聴いたこの「The Circle」は割と良くて、比較的繰り返し聞いた。00年前後の彼ら特有のヒネクレ感やヘヴィロック感と、「Run」(1992年、この前後数枚の時期が黄金期と思う)の頃の質感が上手く止揚されている感じがした。リアルタイムでテレビの歌番組か何かで聴いたシングル〝愛のバクダン〟はシャバ過ぎて当時は最悪と思ったのだが、冷静に考えるとB’zがシャバいのは当時に始まったことではなく、むしろ〝恋心〟とか〝Safety Love〟みたいなシャバシャバ・バブリー・トレンディ青二才感こそが若き日の稲葉浩志氏の真骨頂だったわけで、人間関係にやや倦んでいるオッサンの胸に降り注いだ〝愛のバクダン〟はなかなか心地よかったぞ!(1月24日)
その41-Epidemic「Exit Paradise」(1994)

Epidemic「Exit Paradise」(1994)
米国はカリフォルニア州のスラッシュ/デスメタルバンドの3rd。
20代後半以降、デスメタルという大きな流れそのものからはだいぶ距離を置いてしまったけど、まだこういうオールドスクールというか地味デスといったものは聴けます。
激音を追い求めていた高校生の頃だったら逆に聴けなかっただろう。こういう遅さが良くなったのは、自分の中にメタルクラストという文脈が入り込んでからだな。
と言いつつ、初期の彼らはNuclear Assault風のスラッシュだったので、この鈍重なサウンドへの帰着は、Pantera化という時代の波をかぶったことによるものとも解釈できるか。(1月30日)
その42-The Enid「In The Region Of The Summer Stars」(1976)

イギリスのプログレッシヴロックバンドの1st。
クラシカルなシンフォスタイルのインストバンドで、本作はタロットカードをモチーフにしたコンセプトアルバム、と言っていいのかしら。
緩急や静と動のメリハリが強いサウンドで、〝The Devil〟とかのヘヴィ寄りな楽曲はさておき、静謐なパートが多い大曲なんかは、ドライブ中にかけるとつい考え事をして聞き流してしまい、いつの間にか終わっていた……という感じ。(2月6日)



