『月と睫毛 凪作品集』の話など 編集Sの日誌 2022年11月

11/6(日)
先日のNightwingsのスタジオで武蔵野うどんの話をしたので、無性に食べたくなった。

豚肉やネギが入った甘辛い汁につけて食べる武蔵野うどん、関東圏でも武蔵野エリア以外の人にはあまり知られていない印象(23区内の人が知らなかった)。ロードサイドに「肉汁うどん」ののぼりがひたすら立ってるから、界隈を通る習慣のある人は大体知ってると思うのですが。

稲作に適した大きな川がないため、昔の人が米じゃなく小麦を主食としてたのが由来と聞く。「田無」という地名もあるくらいで(「田無」という地名の由来には諸説ありますが、私は「田が無かったから」という説が好きであります)。

うどんといっても、ツルツルもちもちを旨とする香川などのうどんとは別ジャンルの麺類と言ってもいい、ゴワゴワの歯ごたえが特徴。ラーメン二郎に疲れた中年が、それでも豚の旨味と、ワシワシと小麦を噛みしめるワイルドな悦びを感じたいときに良いかもと個人的には思っている。1回食べると腹がパンパンになって、しばらくいいやと思うも、またふと食べたくなるあたりも二郎的(個人の感想です)。

11/8(火)
娘「パパ、うんこするからトイレ一緒に来て」

俺「あいよ」

娘「マットも便座カバーもトイレットペーパーのカバーもゴミ箱もピンク〜。トイレットペーパーは花柄〜。うちのトイレはなんて可愛いの……(うっとり)」

俺「どんなに華やかに装おうとも、うんこする部屋であることに変わりはない」

娘「そんなこと言ってるからパパはモテないんだよ」

俺「お前も、手前のケツを人に拭かせてるうちはな」

11/11(金)

『月と睫毛 凪作品集』(芸術新聞社、22年3月刊)

気鋭のイラストレーター・〝かわいい屋さん〟凪氏による初の作品集。

CDジャケットや広告でも活動しているようですが、出版業界的には河出書房新社の「純猥談」シリーズで知られている方かと。

巻末に収録されているくどうれいん氏との対談で、くどう氏は凪氏の作品を「この絵の中の女の子たちは、かわいいって言われることに対して『うるせー』って思っていそうな子や、かわいさからちょっとあぶれている感じがいい」と評価しているし、凪氏も「たとえば異性ウケを狙うなら、分かりやすいかわいさやエロさを入れる」ところを私はそうしていないという含みのある発言をしているし、「造形としてかわいい女の子を描きたいわけではない」とも言っているが、それでも十分に(造形的にも)かわいいしエロいです。

「凪さんのイラストは異性のためとか恋愛のためとか、誰かのために向けたかわいいじゃない」(くどう)、「私の絵って何かの途中のシーンが多くて、リップを塗っているところ、髪を結んでいるところ、マニキュアを塗っているところ――。準備や支度の姿フェチというか、何かが秘められているところを描きたくなる」(凪)、「れいんさんは感情の言語化ができないところを突いているなって思うんです。私も喜怒哀楽の中の『間』のところを描きたい」(同)、「(凪氏の作品は)必ずしも行為だけじゃなくて、感情についても途中の部分を切り取っている」(くどう)――両氏の発言のなかには、ビジネス界隈でここ数年よく耳にするようになった「言語化」なんて言葉も登場しますが、イラストレーションにおいても「行為の間」や「喜怒哀楽の間」など普段見過ごされがちな部分にこそフォーカスしていくスタイル、これまた今様な(いや、もはや少し古びているか)ビジネス界隈でよく言われる言葉を用いれば、(モチーフを見る目の)「解像度が高い」ってことになるんでしょう。

この「解像度の高さ」というのは、昨今の人権やハラスメントに対する意識、名前のない感情を言語化しようとする試み(その結果、ネガティブなものは「モヤモヤ」、ポジティブなものは「エモい」といった表現に収斂しちゃうのは美しくないが)などにも通底する、極めて現代的な風潮である気がしています。

実はNightwingsの音楽性もですね、と続けようかと思ったけど酒が回ってきて面倒臭くなったのでやめます。そのうちメンバーが私の一方的語りの犠牲になってくれるでしょう(←こういうのもいずれハラスメント認定されるんだろうな)。

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