神保町を代表するアダルトショップ「芳賀書店」(東京・千代田区)。芳賀英紀氏はその3代目として経営に奔走しながら、SEXセラピストとしてコーチングやイベント運営にも尽力している。かつては大手音楽事務所に所属して歌手を目指していた一方で、SEXを極めんと一念発起し、約3000人もの女性と性的経験を重ねてきた。同氏の性――すなわち、セックス、持ち前の性分(さが)、そして半生(SAGA)について、「芳賀英紀の性(SAGA)」として全9回にわたり連載する。
(聞き手=杉本憲史、取材日=2021年7月15日)
芳賀英紀の性(SAGA)
【第3回】
3Pで童貞喪失という〝敗北体験〟「女子と手を繋いだこともないのに」
――27、8歳で経験人数が2000人に達していた(*1)とのことですが、芳賀さんはどうしてそこまでセックスに駆り立てられていたんですか。
それは、初体験が3Pで、しかもそこで〝敗北〟したからです。ここでの〝敗北体験〟が、後の原動力になりました。
――初体験は何歳?
18歳です。
――意外にも、すごく早いというわけではないのですね。初体験について教えて頂けますか。
まず、初めて女性とお付き合いをしたのは、中学校1年生のときだったんです。
でも、当時の僕はヤンキーでしたから、男友達の前で「一緒に帰ろうよ」なんて言われても、粋がって「てめえ1人で帰れよ!」なんて強がっていたんです。本当は一緒に帰りたいのにね。
デートのシミュレーションをするじゃないですか。手を繋ぎたいとか、キスをしたいとか、でもやりかたがわからないな……とか。そう想像したときに、もし相手に拒絶されたら、一生立ち直れないなと思っていました(笑)。
そういう葛藤をしながらデートを重ねていったら、相手から「何もしてくれないよね」と言われて、ふられたんです。それをトラウマみたいに引きずっていました。
その後、高校生のときにサマースクールでイギリスに行ったり、友人と2人で各国を巡りながら10万円で1カ月過ごすバックパッカーみたいなことをやったりしました。そこには色々な人種がいて、色々な文化に触れられた。
ヨーロッパの人たちって路上で普通にキスをするんですが、それが見てて非常に心地良かったんです。これって幸せの連鎖だなあと。かたや、日本の奥ゆかしさも好きなんですけど。
そのとき、表現することは大事だなと感じ、意識して表現するようになりました。その頃から、ツイッターの固定ツイートにしている内容(下記参照)みたいなのが頭にあって。きちっと発信しない限り、女性は応えてくれないなと、その文化を見て思ったんです。
男は先ず産まれた時点で女性よりも構造的に女性が上だと認めよう。
子供を産むのもお乳をあげれるのも女性。
人類を紡ぐ為に女性は男性より生物学上にある。
だから女性は女性である事だけでもっと胸を張れ。
男性は頑張って女性を守れる力をつけて守ってみて欲しい。
絶対に護ってくれるから。— 芳賀英紀SEXセラピスト&コーチング (@hagashoten) March 18, 2017
ということをトライ・アンド・エラーで日本に帰ってからも繰り返したんですけど、そこでもセックスへの恐怖感というのは消えなくて。
否定されるのが怖い。僕は、いまだに路上ナンパとかしたことがないんです。無視されたら傷つくじゃないですか。一応積み上げてきた自分があるんだけど、それを見てももらえないって傷つく。一生引きずる。この恐怖心は、今でもあるんですよ。
でもそのピュアさを保ちながら、どこかで童貞も捨てたいというのがあって……。
高3の頃、高名な霊能力者の方に、月に1回除霊をしてもらっていたんです。その付き人としていつも2人の女性がいて、彼が東京に来るときは、いつもその女性も一緒に来るんです。愛人というわけではなく、「前世からの主従関係」なんだそうです。「神主と巫女」みたいな関係なんだとか。
その女性の片方が、本業でレースクイーンをしている方でした。何回目かに会ったときに、その人に「私が泊っているホテルに遊びにこない?」って誘われたんです。
当時18歳の僕からしたら、すごくスタイルの良い26歳くらいの方からのお誘いです。「やったー!」みたいな感じじゃないですか(笑)。
それでルンルンしながら指定された部屋に行ったら、その女性と、もう1人知らない綺麗な女性がいたんです。レースクイーンの方はセクシーなランジェリーをつけて、初対面の方は裸にバスローブをまとっていました。「若くてイケてるガキを食えるの楽しみ♪」みたいな空気を感じました。
そこで私は、「じゃあやってやろうじゃねえか」というヤンキー精神と、童貞を捨てたい気持ちから、乗り込んでいったんです。
「お風呂入ろ」って誘われて、3人で風呂に入りました。女性に挟まれるかたちで湯舟に入って、わちゃわちゃしていたら、勃ちました。それをちょっといじられたりしつつ、そのままベッドに行って。
いきなりの3Pだったのですが、AVで学んでいたことはあったので、1人に挿入している間、空いている手でもう1人を攻めたりとか。それが正しいのかどうかもわからないまま、もう無我夢中で。「気持ち良い」とか感じる余裕もないまま、3回射精して、「終わった……」みたいな(笑)。
終わった後に感じたのは、「やられた感」。初体験は、1対1で、良い思い出にしたいという思いが、性に目覚めた小5以来、強かったんです。
先に話した通り、中学時代には彼女がいたこともありましたが、突っ張っていたので実際に身体に触れ合うことはなく。
高校に入ってからもヤンキー的に生きてきたので、寄ってくるのもヤンキーばかり。やがて歌に出会い、音の追求に青春を捧げましたから、その間に男女交際をする余裕もなくて。
本当に、初めて女性と性的な接触をしたのが、この3Pだったんです。
――それまで、女性との接触がまったくなかったというのは意外でした。
だって女性はおろか、男の友達だっていなかったんですよ。とにかく歌のことばかりを考える高校生活でしたから。この話、ちょっと長くなるけどいいですか。
――どうぞ。
(第4回に続く)
*1 第2回参照
■芳賀英紀(はが・ひでのり)
1981年、東京生まれ。神保町のアダルトショップ「芳賀書店」三代目。SEXセラピストとしてコーチングや講演活動を行い、フェチズム文化維持向上委員会も運営する。連載、執筆多数。Twitter Facebook
■杉本憲史(すぎもと・のりひと)
1986年、東京生まれ。埼玉育ち。ウェブメディア「Tranquilized Magazine」編集者、出版業界紙「新文化」記者。編著書にディスクガイド『Vintage and Evil』(オルタナパブリッシング)がある。NightwingsやWitchslaughtでバンド活動。Twitter Facebook
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