今年も色々ありましたね。以下、順不同。画像タップでbandcamp他に飛べます。
Elder & Kadavar / Eldovar – A Story in Darkness and Light(Robotor)
10年代以降にプログレやスラッジメタルの影響下の新世代ストーナーバンド(「post stoner」なんて言葉もあるみたいですよ)が登場してきたなか、知名度で頭ひとつ抜けたのがElderとAll Them Witches。本作はElderとドイツのヴィンテージハードロック・バンドKadavarとのコラボ。コロナ禍でツアーができなくなったことで始動したという(ElderのBa.、Jack Donovanは不参加)。Pink Floyd風のプログレッシヴロックと熱っぽくて埃っぽいヴィンテージ・ハードロックががっぷり四つ。両者の持ち味が巧みに発揮されたグレートな1枚ですよ。
Weedpecker / IV: The Stream Of Forgotten Thoughts(Stickman)
WeedpeckerはElderとレーベルメイトだった時期もあるポーランドのバンド。本作は4thで、 Wyro(Vo.、Gt.)以外のメンバーが総入れ替えになってから初のアルバム。同郷のドゥームバンドBelzebongのメンバーが在籍。↑のEldovarが70年代のPink Floydなら、こっちは60年代のPink Floydにスラッジメタルのエッジとストーナーの疾走感を乗せたスタイル。従来の「ストーナー」のイメージからはかけ離れた清涼感に満ち溢れている。
King Buffalo / The Burden of Restlessness(Self-Released)
ニューヨーク州ロチェスターのトリオ。このバンドも新世代ストーナーバンドのひとつに数えられるようです(2ndがStickman Recordsからリリースされている)。本作は3rdで、21年内にリリースが予定されている3部作の1作目らしいが、12月31日現在リリースされているのは本作と「Acheron」のみ。前後の作品と比べるとサイケデリックな浮遊感などは抑えめ。Toolを彷彿とさせる内省的なVo.ラインと細かく刻むギターリフの反復が主体のヘヴィプログレッシヴロック。2022年にはUncle AcidのUSツアーで前座を務めることが決まっており、これからもっと伸びていきそうです。Tool云々ってフレーズは去年のAll Them Witchesのとこでも使ってました。語彙力がない。
Blackwater Holylight / Silence/Motion(Riding Easy)
オレゴン州ポートランドのバンドによる3rd。ThouのBryan Funck、Inter ArmaのMike PaparoがゲストVo.で参加。前2作は60sサイケ〜インディーロック +ドゥームという、どちらかといえばヴィンテージ寄りだったのに対して、本作ではブラックメタルやシューゲイザー(「doomgaze」なんて言葉もあるみたいですよ)要素、80s風のシンセやストリングを導入したモダンな作風に。バンド名、タイトルが表している通り、光と影、静と動のコントラストが何とも美しい。昨年のEmma Ruth Rundle & Thouなどが好きな方におすすめです。
Monolord / Your Time To Shine(Relapse)
スウェーデンのトリオによる5th。「ポスト〜」や「モダン」もいいけれど、足し算も引き算もしない、伝統の研鑽から生み出される作品も良いものです。「Rust」(17年)以降のヘヴィ、グルーヴィ、メランコリーの路線をさらに磨き上げた現代のファイネスト・スウェディッシュドゥーム。
Jointhugger / Surrounded By Vultures(Majestic Mountain)
ノルウェーのトリオによる2ndフル。バンド名は映画『エイリアン』のフェイスハガーからか。 ゴリゴリ、ブリブリのストーナードゥームを軸に、反復に終始しないよく練られた構成に、上手すぎず下手すぎずの耳に心地よい歌メロを乗せたMonolordとも相通じるスタイル。こっちはもっとブルーズ・オリエンテッド。
The Limit / Caveman Logic(Svart)
今年は元TroubleのEric Wagner、Karma To BurnのWill Mecumの訃報という辛すぎるニュースがあったものの、ベテラン勢は元気すぎるぐらい元気です。本作は“元祖パンク”Testors他のSonny Vincent(Gt.)とThe StoogesのJimmy Recca(Ba.)、“元祖ドゥーム”PentagramのBobby Liebling(Vo.)らによって結成されたバンドの 1st。Bobbyのアクの強い歌声を乗せたプロトメタル / パンク、ロックンロール。ドゥームとパンクの関係は80年代のSaint VitusとSST Recordsまで遡ることができるが、それがもう少し早かったら? というイマジネーションを掻き立てられる。
今年はBobbyとEarthrideほかのDave Shermanとのコラボ作(08年のデモ音源をマスタリングした作品)もリリースされて、こちらもよかったです。
Monster Magnet / A Better Dystopia(Napalm)
元気すぎるベテランその2。Dave Windorf(Vo.、Gt.)率いるストーナー / スペースロックバンドによる初のカバーアルバム。コロナ禍でツアーができなくなったことで制作されたという。60〜70年代のオブスキュアなヘヴィサイケ、ハードロック中心の選曲。いずれもMonstrer Magnetの血肉となったバンドの曲だけに違和感ゼロの仕上がり。”Be Forewarned”がPentagramじゃなくてMacabre名義なところにガチ勢というか、古参オタク味を感じる。こちらのインタビューがあの時代のバンドへの愛情たっぷり&当時のディグり方の話(「(アー写に)ハゲはいるか? いたらジャズかもしれない」)が面白い。
今年はDave含む最初期のメンバーらによるプロジェクトAcid Reichの音源も再発されて、こちらもよかったです。
Bongzilla / Weedsconsin(Heavy Psych Sounds)
アメリカはウィスコンシン州のバンドによる5thで、再結成&トリオ編成になってから初のアルバム。彼らももうベテランですかね。「Amerijuanican」(05年)の延長線上のブルージィなスラッジで、哀愁漂わす”Space Rock”と、サイケデリックなエフェクトやパーカッションを交えた”Earth Bong, Smoked, Mags Bags”の10分超えの長尺2曲が光っています。しかしこの手のバンドは歳の取り方が上手いというか、加齢がいい”味”になっていきますね。
Santo Fuzz / Quanaxhuato(Self-Released)
先日、Amazon Primeに突如として「サント映画」が大量に追加されまして。観たいなとずっと思いつつ観れていなかった作品群なので狂喜していたところで見つけたのが、このメキシコはグアナフラト州シラトのバンドによる3rd。ホラーというか、50年代の「怪奇」映画風のアトモスフィアを醸し出すオルガンやシンセが特徴的なサイケデリックドゥーム。そこに乗るスペイン語歌唱の相性の良いこと! 最近の南米バンドの充実っぷりは何に起因しているのだろうか。
Meatbodies / 333(In The Red)
ロサンゼルス拠点、Ty Segall率いるFuzzのメンバーでもあるChad Ubovich(Vo.、Gt.)のバンドによる3rd。どヘヴィな1曲目”Reach For The Sunn”に思わずのけぞってしまった。60sサイケ〜プロトメタルをSpacemen 3などドラッギーなネオサイケ〜ドローンメタル(曲名はSunn O)))への目配せだそうだ)と直結した、Fuzzとはまた別ベクトルのアナログヘヴィネス。
Nothing Is Real / Transmissions Of The Unearthly
スラッジの肝は”汚さ”である。EyehategodのMike Willamsがそう言ってるんだから間違いない(wiki引用だけど)。LAの謎のバンド……だったがNicholas Turnerなる人物のワンマン・プロジェクトと判明したNothing Is Realの9th。Jeremy lauria(Dr.)なる人物との2日間にわたる即興のセッションを基にした、「CHAOS」と「ORDER」の2部構成。King CrimsonやCanなどのプログレ、クラウトロックから影響されたという楽曲(特に後半の「ORDER」)は90年代型の”汚い”スラッジ / ドゥームが00年代のスラッジメタルとは別方向へと進化を遂げたかのような異形さ。
Rob Zombie / The Lunar Injection Kool Aid Eclipse Conspiracy(Nuclear Blast)
個人的にJohn 5加入以降のRob Zombieはハズレがないです。ハードロック、ブルースにカントリーとルーツミュージックの要素が強く出ていて。当然その中にはBlack Sabbathもいるわけで、ドゥーム / ストーナーともかなり親和性の高いことをやっていると思うんですがどうでしょう。”The Ballad of Sleazy Rider”(↓に貼った曲)なんてストーナーバンドの曲名じゃないか。曲の基本骨子は「いつもの」Rob Zombieなので、従来のファン以外にはリーチしづらいのが痛しかゆし。Monster Magnet、Clutchあたりとツアーしてほしい。
Mienakunaru / Lost Bones Of The Holy Butterfly(Drone Rock)
Bong、11 ParanoiasなどのMike Vest(Gt.、Ba.)、20 GuildersなどのJunzo Suzuki(Gt.)らによるコラボレーション。マスタリングは元Monster MagnetのJohn McBain。ジャパニーズサイケとドゥーム / スラッジ / ドローンメタルがドロドロに溶け合った超重量級スペースロック。この手の作品にはもう無条件降伏です。同年リリースの「Blood Sun」も最高でした。
Allie Crow Buckley / Moonlit and Devious(Self-Released)
カリフォルニア州ロサンゼルス拠点のSSWによる1st。bandcampのタグにあるチェンバーポップというジャンルにはまったく馴染みがないのですが、歪んだギターに緩慢なテンポ、幽玄なメロディのドリーミィなサイケってことでしょうか。ドゥーム、というかBlackwater Holylightのアルバムを気に入った人ならすんなり耳に馴染むのでは。ちなみに、19年のデビューEPでBlack Sabbathの”Changes”をカバーしている。
Birdy / Young Heart(Atlantic)
英国出身のSSWによる4th。10年前に”Skinny Love”を聴いてから新しいアルバムが出るたびに、70年代フォークみたいなのやってくれないかなあ……ブリティッシュじゃなくてアメリカンなやつ……と思っていたら、本当にやった。ドリームカムトゥルー。Joni Mitchellに感銘を受け、ナッシュヴィルで曲作りを行ったという。恋人との不和、別れ、異郷の地での孤独、虚飾を取り払った”若き心”。念のため言っておくと、70年代完全再現!みたいな感じではないです。
Honorable Mentions
Abiuro / The Origin of Hyper Doom(Captured)
betcover!! / 時間(Self-Released)
Electric Wizard / L.S.D.(Creep Purple, Witchfinder)
Eyehategod / A history of Nomadic Behavior(Relapse)
Hebi Katana / Hebi Katana(Argonauta)
Goat / Headsoup(Rocket Recordings)
Iceage / Seek Shelter(Mexican Summer)
Mdou Moctar / Afrique Victime(Matador)
Moderator / Midnight Madness(Melting)
Yawning Sons / Sky Island(Ripple Music)
yokujitsu / Exploit / Just Vibes EP(Self-Released)
3 thoughts on “梵天レコードが選ぶ2021年ベスト・アルバム”
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