良い思い出のない1年。なにがあったっけ……。Sonic Fiendのyoutubeチャンネルの撮影を一部お手伝いしました。来年はお知らせできることがあると思います。お楽しみに。
今年は旧作を中心に聴いていたので、例年よりは少なめになりました。
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All Them Witches – “Nothing As Ideal” New West
最悪な一年でもATWが新譜を出したというだけで救われた気分になれる。The BeatlesやPink Floydでお馴染みのAbbey Road Studiosで、大傑作3rd “Dying Surfer Meets His Maker” (15)を手掛けたMikey Allredを再びプロデューサーに迎えて制作された6thフル。”Dying~”の路線 + 90年代のToolを彷彿とさせる尖ったギターという組み合わせは世相を反映したかのような過去一の暗さ&重さ。”Coyote Woman”シリーズ三曲目で、ローマ建国を(アメリカ)南部の視点を通して描いたという叙事詩”The Children of Coyote Woman”、ポストアポカリプティックなラスト”Rats in Ruin”も出色。
Slift – “Ummon” Vicious Circle
熱い!!フランス南西部の都市トゥールーズのトリオによる2nd。クラウト/スペースロックにストーナーロックという名のジェットパックをオン!ケツに火をつけて汗を撒き散らし、真空に咆哮を轟かせながらドゥーミィな重力波を突き抜け、ハイパースペースを縦横無尽に駆け巡る壮大なSF叙事詩、スペースオデッセイであります。今年のジャケ/アートワーク大賞あげちゃう。
Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs – “Viscerals” Rocket
英国ニューカッスルのバンドによる3rdフル。Black SabbathとMotorhead、そしてHawkwind。由緒正しき英国ロック極道の血筋、というのが過去作での印象。本作ではHawkwind要素が薄れて、充分にタイトだった前作から更にシャープに絞り上げてきました。スラッシュメタル風の#5、キャッチーな#6が印象的。長尺での展開も相変わらずいいですね。Acrimonyみたい。本作はイギリスのインディペンデント・レコード・ストア・チャートで1位、メインストリームのアルバム・チャートでは67位を記録。1500人収容の会場でのライブも予定されていたとのことなので、もう結構な人気があるんですね。
Lucidvox – “We Are” Glitterbeat
ロシア・モスクワの女性4人組による4th。ポストパンクやゴシックロックの呪術的なリズムに演劇性、ポストメタルやドゥームのヘヴィネス(うっすらNu-Metalの臭いもする)、ヘヴィサイケ/スペースロックをロシアの寒々とした叙情性でまとめ上げた暗黒ロック。普段耳にすることが多いからなのか、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のOPが好きでよく聴いてたからなのか、ロシア語の歌唱はすんなりと耳に馴染む。本人たちの解説ではインスピレーション、影響を受けたバンドとして、Godspeed You! Black Emperor、Melody’s Echo Chamber、Tool、Russian Circles、Black Sabbath、Animals As Leader、Badbadnotgood、The Garden、Thee Oh Sees、King Gizzard & The Lizard Wizardの名前が挙げられている。
The Death Wheelers – “Divine Filth” RidingEasy
カナダのインスト・ドゥームパンク・バンドによる2nd。本作は架空のバイカー・エクスプロイテーション映画のサウンドトラックとして制作されている。インタビューによると「『ロボコップ2』、人生での出来事、レッスルマニア14で頂点に達したShawn MichaelsとSteve Austinの確執」から着想を得たとのこと。従来のドゥームパンク路線に加えて、ドゥームパンクのパンク部分をサーフロックやサイコビリーといった50年代の不良音楽に置き換えたような楽曲が耳を引きます。ドゥームを根っことして捉えているのであろう無骨さも良い。
Death Valley Girls – “Under the Spell of Joy” Suicide Squeeze
LAの五人組による4th。このバンドのことは全く知らなかったんですがIggy Popが絶賛していて、MVに出演もしている(ハンバーガー食べてるだけ!)。ヘヴィなガレージロック、ムーディーなオルガンやサックスを交えたカラフルなサイケポップ。西海岸的な陽気さとスピリチュアルなアトモスフィアが同居する音の中に、深くて暗い影が見えてしまうのはバンド名のせいか(マンソン・ファミリーを連想するのは私だけではないだろう)。中心人物のBonnie Bloomgarden (Vo.、Gt.、Organ)は”スペース・ゴスペル”と形容していて、ナイジェリアのサイケ、70sアフリカンロック、エチオピアのファンクから影響を受けたと語っている。アルバム・タイトルはサンディエゴのストーナー/ヘヴィサイケ・バンドJoyの同名作(のTシャツ)からだそうです。
Amon Acid – “Ψ” dübel 8
英国はリーズ出身のデュオの1stフル。プログラミングされたビートに妖しげな詠唱Vo.と中近東風の旋律やヘヴィなギターをのせたヒプノティックなサイケデリックサウンドは、さながら大麻の紫煙に包まれたOzric Tentacles。#7 “Crystal Eyes”、#10 “Stone Age”ではSabbathyなドゥーム・リフも飛び出す。10月に出たEPはこのドゥーム路線で、こちらもよかったです。
GREENMACHiNE – “GREENMACHiNE” Daymare
金沢の”ハードコアロック”バンドによる5th。2年連続でGREENMACHiNEのアルバムが聴けるこの幸福よ。ごちゃごちゃ言わずに聴いて、メンバーによる全曲解説を読みましょう。
Ruff Majik – “The Devil’s Cattle” Mongrel
“rot ‘n roll”を掲げる南アフリカの5人組による3rd。Queens of the Stone Age〜Eagles of Death Metalをゴリゴリのストーナー/ドゥーム/スラッジで仕立て上げたギラギラの痛快ロックンロール!ギンギンに尖りまくったスピードチューンは近年のThe Atomic Bitchwaxにも近似する。ズルズルのドゥームで締めるラストも最高。#11 “Born To Be Bile”にカナディアン・スラッジャーDopethroneのVincent Houde (Vo.)がゲスト参加。
Sigiriya – “Maiden Mother Crone” Burning World
元Acrimonyのメンバーによって結成された英国ウェールズの4人組の6年ぶり、3枚目のアルバム。前作からドラムが交代している。カッチリ&ドッシリとしたストーナーメタルに、Acrimony譲りのサイケデリック感と押しと引きの妙、神秘性が溶け込んだ、当該ジャンルの理想型のような一枚。
Boris – “NO” Blood Sucker
鬱屈した世相に風穴を開けるヘヴィロックンロール+ハードコアパンク。Borisは”Heavy Rocks”や”あくまのうた”あたりが一番好きなので、久々に「これだよ、これ!」と快哉を叫んだ一枚。
Guevnna – “Burning Skyline” LongLegsLongArms
東京のバンドによる2ndフル。ドゥーム/ストーナー/スラッジにグランジ/オルタナ、そしてディスコ(正直ディスコミュージックに関してはよく知らないのでアレですけど)。実に今らしい音です。様々なジャンルのアマルガム、ニッチの追求、「他とは違うことをやる」、まさにポストメタルとヴィンテージ・リバイバルを通過した現在のドゥーム/ストーナーを面白くしている精神による賜物で、この記事中でも音は違うけど近しい精神のバンドが見つけられるはず。当の本人たちには知ったこっちゃないことなのかもしれませんが。
Yawning Man – “Live At Giant Rock” Heavy Psych Sounds
ライブ盤ですがこれは外せません。砂漠の神話で語られる祭典”ジェネレーターパーティー”を、デザートロックの始祖(諸説アリ)自ら再現した歴史的快挙。コロナ禍でフェスが休止になったことがきっかけで制作されたというのがなんとも皮肉。これを生で観られたらもう死んでもいいな。
Emma Ruth Rundle & Thou – “May Our Chambers Be Full” Sacred Bones
Thouでいつも思い出すのが、Bryan Funck (Vo.) のインタビューでの「俺が入る前はAcid BathのDax Riggsみたいなヴォーカルだった (それが気に入らなかった)」という発言。Bryan加入前の音源を聴くと、なるほど、デスメタリックなドゥーム/スラッジの部分と憂いを帯びたクリーンVo. (Matthew Thudium (Gt.) が兼任 ) はAcid Bathの1stからの影響を感じさせる。Bryan加入後にはAgents Of Oblivion(Acid Bath解散後にDax Riggs (Vo.) とMike Sanchez (Gt.) がやっていたバンド)のカバーをやってたりして、ニューオリンズ出身であることも含めて私の中ではAcid Bathの存在がチラつくバンドなんですね。
Bryan加入後の躍進については皆さんご存知の通り。しかし近年、”Inconsolable” (18) でフォークをやってみたり、”Rhea Sylvia” (18)ではMatthew Thudium (Gt.)の作曲でグランジにフォーカスしたり、”Magus” (17)のアー写でゴシックロッカーを気取ってみたり(”Gothic Hardcore”※という言葉が頭に浮かんだのは私だけですか!?)と、チラつく頻度がグングン増えてきました。グランジやフォーク、ゴシックロックとエクストリームミュージックの融合……それは、方法論は違えどAcid Bathが20年以上前に試みていたことでもあるわけですよ。
で、本作を聴いた時に、ちょうどAgents Of Oblivionの唯一作(00年)のレビューを書くために改めて聴き直していたこともあって、Agents Of Oblivionを連想したんですね。この唯一作というのが、エクストリームなヘヴィさこそ無いものの、10年代以降の様々なジャンル要素を取り入れたメロディックなドゥーム/ストーナー(ヴィンテージロック寄りのポストメタル?)を先取りしたかのような音なんですね。
そこに本作リリース時のインタビューを読むとなんと、Andy Gibbs (Gt.)が「俺とMatthewは(Acid Bath/Agent of Oblivionから)大きな影響を受けている」「Acid Bathは多分、初めて聴いた”エクストリーム”な音楽だ」「Agents Of Oblivionのアルバムは今でも素晴らしいよ。よく聴く」と発言しているではないか!
現在進行形のポストメタル/スラッジ、エクストリームミュージックとして捉えるべき作品なのは百も承知の上で、Acid Bath〜Agents Of Oblivionの影響を、”Tranquilized” Magazineをやっている人間としてどうしても指摘しておかなくては、と思った次第です。
※Acid Bathのギタリストで、現GoatwhoreのSammy Pierre DuetがAcid Bathのサウンドを形容した言葉。
その他よく聴いた作品 HONORABLE MENTIONS
Angel Olsen – “Whole New Mess” Jagjaguwar
https://angelolsen.bandcamp.com/album/whole-new-mess
The Atomic Bitchwax – “Scorpio” Tee Pee
https://theatomicbitchwax.bandcamp.com/album/scorpio
Ball – “Like You Are…I Once Was…Like I Am – You Will Never Be” Horny
https://ball666.bandcamp.com/album/like-you-are-i-once-was-like-i-am-you-will-never-be
Floaters – “Roman Holiday” Captured
https://floatersjapan.bandcamp.com/album/roman-holiday
Ho99o9 – “Blurr” 999Deathkult
https://ho99o9.bandcamp.com/album/blurr-mixtape
Nothing Is Real – “I Control You” Self-Released
https://nothingisreal333.bandcamp.com/album/i-control-you
ORGÖNE – “MOS/FET” Heavy Psych Sounds
https://nothingisreal333.bandcamp.com/album/i-control-you
Puscifer – “Existential Reckoning” BMG/Alchemy Recordings/Puscifer Entertainment
Sonic Boom – “All Things Being Equal” CarPark
https://sonicboomspacemen3.bandcamp.com/album/all-things-being-equal-3
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