BEST ALBUMS OF 2025

今年は『ドゥームメタル・ガイドブック』(パブリブ)の刊行を記念したイベント「激重・激遅・激渋 VS 酩酊と幻惑 真昼間っから重低音メタル大視聴会」に出させていただいたり、「ミュージック・マガジン 2025年11月号」(ミュージック・マガジン)に少し寄稿させていただいたりなんかしました。

年間ベストアルバムは30枚ほどピックアップ(コメントありは16枚)。では、行ってみましょう。

 

Dax Riggs – 7 Songs For Spiders

昨年再始動したAcid Bathのフロントマン・Dax Riggsのソロ名義4作目。世界におやすみを告げてから15年、まさかToolより待たされるとは思いませんでしたよ。ドゥーミーでブルージーでサイケデリックでゴシックなスワンプ・ロックとでも言えばよいのでしょうか。煙たいファズとシンセがどの過去作とも異なるテクスチャを与えていて、これがたまらなく気持ちよい。夢とうつつの狭間にいるような幻惑的な歌詞も相変わらず素晴らしい。今年ダントツで一番聴いたアルバムです。

Slung – IN WAYS

英国はブライトンのバンドによる1st。bandcampのプロフィールにある「MastodonとMazzy Starの間のようなバンド」という表現が的確で、MastodonやBaroness以降のスラッジにシューゲイザー、ポストハードコアなどを取り入れた“歌モノ”としての魅力、Katie Oldham(Vo.)の存在感が際立っている。アルバムの半分ぐらい00年代前半のヒット・バラード(アメリカの)みたいにも聴こえるんだが、そこも込みでよい。スラッジ・ファン向けというよりはバンドが影響を受けたと公言するDeftonesあたりが好きな人向けか。

Dope Smoker – LXST CΛSSXTTX

英国のドゥーム/ストーナー・トリオによる異色作。TurntablesとしてHostileなる人物がクレジットされている。ラップメタル(とトラップ?)とゥームメタルの融合の理想系です。もともとグランジやオルタナへの意識が強かったバンドなのもあってか、90年代のクロスオーバー感覚が滲み出ており、映画『ジャッジメント・ナイト』のサントラに紛れ込んでいても不思議ではない手触りがある。同じく今年リリースされた「The Wolfe」「DOOMSHOP」もよかったです。

Wino – Create or Die

The ObsessedなどのScott ’Wino’ Weinrichのソロ名義4作目。アルバム・タイトルは、Winoが受け取った友人からの手紙の結びに書かれていた言葉だという。”Anhedonia”にThe ObsessedのJason Taylor(Gt.)が参加している。WIno印のドゥームロックとアイリッシュ・フォーク、カントリーなどルーツ・ミュージックに根差した楽曲が同居する滋味と渋味の詰まった1枚。”Lost Souls Fly”〜”Bury Me in Texas”がハイライト。ルーツに立ち返った結果、一部のモダンなバンドとも似た味わいが醸し出されています。

MOSSBACK – Black Canyon City

Grim Salvoの一員でもあるMOSSBACKの2nd。カントリーとブルースとトラップとゴシックとドゥームとスラッジとグランジがオールインワンしちゃってるすごいやつ。トラップメタルや昨今の何でもありメタル?に括れたりするのかもしれないが、上述のWinoやDope Smokerのアルバム、Acid Bath〜Dax Riggsの流れから聴けば、意外なほど文脈の中に収まってきますね。

Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs – Death Hilarious

英国のバンドによる5th。ノイジー/ブルージー/パンキッシュなストーナードゥームを軸に、クロスオーバー風の”Blocage”、グラムロックとプロトメタルが折衷された”Snitches”、Run The JewelsのEl-Pがラップで参加した”Glib Tongued”、Kyuss”Greenmachine”ばりに疾走するパートが心地よい”The Wyrm”などバラエティ豊かな楽曲の数々がお見事。バンドの”これまで”と”これから”を示した力作。

Rwake – The Return Of Magik

アメリカはアーカンソー州のバンドの6th。重厚なスラッジ・リフとメランコリックなメロディ、ブラックメタルやサイケの要素を織り交ぜたプログレッシヴ/アトモスフェリックなサウンドは本作でも健在。70年代から活動しているサザンロック・バンドBlack Oak ArkansasのJim “Dandy” Mangrumがスポークン・ワードで参加した”Distant Constellations & The Psychedelic Incarceration”は彼らの持ち味である土着性と神秘性が最大限に発揮された名曲。

Castle Rat – The Bestiary

ニューヨークはブルックリンの「ファンタジー・ドゥーム」バンドによる2nd。モダンレトロ・スタイルだった前作から、初期Trouble〜The Sword系統のドゥームをスラッジ/ポストメタル風の現代的なプロダクションで仕上げたハイクオリティ・ドゥームメタルへと進化しています。MVも作り込まれていて、70年代のオカルト/ファンタジーのビジュアルが好きな人には眼福でしょう。

Naxatras – V

ギリシャはテッサロニキのバンドによる文字通りの5th。昨年はMonkey 3が見事な宇宙旅行に連れて行ってくれたわけですが、今年は彼らが。心地よい浮遊感と砂漠の情緒を演出するストーナー・リフ、中近東風のメロディやトライバルなリズムを交えた80年代のPink FloydやOzric Tentacles譲りのシンセ主導のスペースロック。5〜6分台にまとめられた曲構成も心地よく、没入感と聴きやすさのバランスが秀逸です。

Giöbia – X-ÆON

イタリアはミラノのベテラン・スペースロックバンドによる8th。ヘヴィなGt.を随所に配したスペースロックという前作のスタイルはそのままに本作ではドゥーム/ストーナーの重量感が強調されている。B面は”La Mort de la Terre”(”大地の死”の意)と題された4部構成の組曲で、70年代のB級イタリアン映画のサウンドトラックやUncle Acid and Deadbeats『Nell’ ora blu』(24年)を彷彿とさせる内容。

Miss Mellow – Dancing Through The Earth

ドイツはミュンヘンのバンドによる2年ぶり、2枚目のアルバム。ファンク〜ディスコとプロトメタル〜ストーナー/ドゥーム、クラウトロックをブレンドした万華鏡のようなモダンレトロ・サウンドは唯一無二。本作では長尺でのプログレッシヴな展開にも踏み込んでいる。Naxatrasが好きな人はぜひ。

AAWKS – On Through the Sky Maze

バイオリンとシンセを兼務するメンバーを擁する、カナダはオンタリオ州の4人組による2nd。「Black Masses」期のElectric Wizard系サイケデリック/オカルト・ドゥームロックとOrange GoblinやHigh On Fire風のダーティなブギーやヘヴィ・ロックンロールがゴッツンコ。どの曲も細やかなアレンジと巧みな構成が光っていて、ダレやマンネリを感じさせない。ドゥーム/ストーナー好きならまず外さない内容。

Hedvig Mollestad Trio – Bees In The Bonnet

ノルウェーのジャズ・ギタリストHedvig Mollestad率いるバンドの8th。『Red』期のKing CrimsonやMahavishnu Orchestraなどプログレッシヴ/ジャズロックをプロトメタル〜ストーナーのフィルターに通したような作風で、過去には「ジャズ・サバス」と形容されたこともあるとか(バンドのJazz Sabbathとは無関係)。70年代前半のバンドが持っていた、ジャンルが細分化される以前の混沌とした熱の中に、スラッジメタルやポストパンクがいるのが面白い。

FKA twigs – EUSEXUA

軽い。ここまでコメントしてきた作品の多くとは対極にあるような軽さ。座ったり寝転がって聴いてると体がくすぐったくなってくるんですよ。運動のお供によく聴きました。

Amelie Siba – This May Be the Only Way 2 Heaven

チェコはプラハを拠点に活動するSSWの4th。ローファイなノイズポップ〜インディーロックにポストメタルやブラックメタルが溶け込んだ音像は、ダース・ベイダーのテーマをリコーダーで演奏した曲を聴いた時にも似た不可思議さと中毒性あり。

Masters Of Reality – The Archer

KyussやQOTSAを手がけたプロデューサーChris Goss率いるバンドの7th。QOTSAにも通じる(こっちが先)ゆったりとしていて乾いたメロウネスが特徴のサイケデリックでオルタナティヴなブルースロック。今年の夏はこれ聴いて乗り切ったまである。ちなみに欧米ではドゥーム/ストーナー系フェスのヘッドライナー級のバンドです。

Deftones – private music

Witchcraft – Idag

Hebi Katana – Imperfection

Buzzard – Mean Bone

Goat & human language – The Human Language ‘Goat’ Tape

Psychedelic Porn Crumpets – Pogo Rodeo

Rún – Rún

Author and Punisher – Nocturnal Birding

Abiuro – 落

Slomatics – Atomicult

Oklou – choke enough

Shedfromthebody – Everything Out There Has Teeth

Lammping – Never Never

Ho99o9 – Tomorrow We Escape

 

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