【Index】
その1-Extreme「Extreme」(1989)
その2-ファンジン「青牡蠣通信」Vol.11(2025)
その3-Judas Priest「Angel Of Retribution」(2005)
その4-Fortune「Making Gold」(1993)
最近、格闘技ジムの行き帰りの車中で、以前よく聴いていたヘヴィメタル系CDを意識的に聴いています。必ずしも金曜日と決まっているわけではないが、金曜日が多いのでこういうタイトルにする。
昔聴いていたCDを久しぶりに聴くと、当時の記憶が蘇ってきたり、当時は気付かなかった音楽的ギミックに耳が行ったり、時間の経過がもたらした感想の変化を自分なりに感知することがあったりして面白い。
そういう感想もこまごまと記録に残しておけば、10年後20年後に読み返したときにまた自分で楽しめるんじゃないかと思い、自分しか使わないハッシュタグ付けてSNSに放り込んでおこうと思って始めた、ごく私的な感想雑記です。
ここ1~2カ月ほどで聴いて頭に色々な言葉が浮かんだのは、Death Angel、Dream Theater、Desultory、Dark Angel、Dark Tranquillityなど(ABC順に聴いているので、この頃は〝D〟でした)。しかし遡ってまで書くのは、ライブ感が失われるし面倒臭いので、やりません。
その1―Extreme「Extreme」(1989)
スーパーギタリスト、ヌーノ・ベッテンコートを輩出したアメリカのハードロックバンドの1st。
ハードロックにファンキーな要素を融合させたバンドとして、主にハードロック/ヘヴィメタルサイドのリスナーに支持されている印象のバンドだけど、同時代のLiving ColourとかRed Hot Chili Peppersとかのファンキーオルタナロックを聴く耳で聴いても面白いんじゃないかと思う。
ただ、このジャケットが示すような独特のダサさが、時代的なモノに加えてとくにHR/HM系特有のダサさでもあるので、それを許せる当該ジャンルのヘヴィリスナー専用のスタッフになっていることはまあ自然な成り行きなんだろう。
私は中学生くらいの頃に、彼らの代表作である2nd「Pornograffitti」を割と愛聴していたが、素っ頓狂に明るいヴォーカルの感じなんかを捉えて「これはダサい」とも感じていたので、聴いていることをあまり公言しなかった。
Nightwingsのスタジオで、H氏が一部の音楽を言い表すときに「こういうの好きなんだ~って、女子に思われたくない音楽」という表現を用いることがあるが、その感じ。
Nightwingsのスタジオと言えば、しばしばメンバー間で「どんなバンドTシャツがダサくて、どんなバンドTシャツならダサくないか」という議論をするのだが、K氏がダサいアイテムの筆頭としてよく挙げるのが、このExtremeの1stのジャケを前面にあしらったプリントTシャツ。
確かに、このジャケのデザインはとにかくストレートに「ダサい」わけだけど、これでTシャツのボディが白だったりすれば、「ロックを聴かない今どきの若者が、あえて80’sロックテイストの古着を着てる感」で着られなくもないんじゃないかと個人的には思う。
しかしこのTシャツを着てライブハウスに繰り出しなぞしようものなら、普通に「Extremeガチ勢」として捉えられる可能性が高いことはもちろん、下手すると「速弾きガチ勢」と思われるかもしれず、それはなんだかすごく癪に障る。
個人的に、「ハードロックガチ勢」以上に、「速弾きガチ勢」にまとわりつく非モテ感のイメージは強いと感じている。バンド関係者同士だと、「アンサンブルをわからない奴」と思われそうなリスクも感じる。この感じは一体なんなんでしょう。
Extremeの音楽的業績は凄いし、ヌーノ・ベッテンコートのプレイをしっかりとコピーできるギタリストなら(私には無理)、私よりバンドアンサンブルを深く解し、私よりステージでモテるとも思うのですけれども。(4月4日)
その2-ファンジン「青牡蠣通信」Vol.11(2025)
“BOC”Kenさんによる名門ファンジン、「青牡蠣通信」Vol.11。
基本的にはメタル系のZINEだけど、Kenさんの幅広い音楽的嗜好が反映されてハードコアやプログレ、J-POP、アイドル、昭和歌謡などにも触手を伸ばした内容。Nightwingsのアルバムもレビューして頂いてありがたい。
アクセル土田氏(GATE AND BARRICADE)によるLiFEのインタビューを興味深く読んだ。
本誌を特徴づけているのがKenさんの女性芸能人に対する愛情の深さで、アイドルやセクシー女優などについて、音楽と同等の熱量をもって綴られている。
今号にはYuto氏(Blood Sucking Freak)による「屍体性愛者」をテーマにした寄稿もあったりして、Kenさんによる「編集後記…の前の独り言」で昭和のエロ本からの影響について言及されていることにも納得のカオスさが心地良い。
「編集後記」には、「音楽とエロを同列に書くとは!?と眉をひそめる意見も当然わかっておりますが、こればっかりは、好きなものを好きなように追求するという姿勢は崩したくない」とあるが、むしろそうでなくては、と思う。
先日、Nightwingsのスタジオに持って行き、BANさん(TILL YOUR DEATH RECORDS)による寄稿「日本のモダンヘビィネスシーンを代表する作品紹介」で盛り上がった。何しろメンバーの大半が、90年代後半から00年代初頭にかけてキッズ時代を過ごし、ライブハウスなどのシーンにおけるそうした盛り上がりを見て育ったのである。あれも載ってる、これも載ってる、これ当時中古屋によくあったけど今見かけなくなったなあ、なんて話してました。(4月7日)
その3-Judas Priest「Angel Of Retribution」(2005)
かつてのJudas Priestのドラマーであるレス・ビンクスの訃報が届いたばかりだが、それとは関係なくこのアルバムを。
このCDは私のコレクションの中で長年行方不明になっていて、つい先日、妻がゲームソフトを保管しているケースの中から「リズム天国ゴールド」とか「キングダム・ハーツ」とかに紛れて入っているのを発見した。そういえば妻と交際中、彼女の家にこのCDを持って行って、特典のライブDVDを観た記憶があるから、それ以来の邂逅ということになる。実に10年以上ぶりだ。そしてこのアルバムがもう20年前の作品ということにも驚き。
このアルバムが発売された時には、ロブ・ハルフォードの復帰作であるということに当然それなりの期待をしつつ、でも老舗バンドの〝現代作〟にありがちなズッコケ感もそれなりに事前の期待値に織り込んで、割と冷静に向き合った覚えがある。
「Painkiller」(1990年)以降のJudas PriestとHalfordのモダンさを消化しつつ、Judas Priestおよびロブ・ハルフォードにメタル・ゴッドとしての威光を強く求める(特に)「Painkiller」のファンの期待を裏切らないようにまとめてきたって感じかなあ。
Judas Priestの長い歴史の各時代ごとにみられた特徴をもつような曲が(おそらく意識的に)バランスよく収められている。しかし、ドラマーがスコット・トラヴィスということもあって、いかんせん全体の音作りが「Painkiller」以降の感じ。我が耳を〝Painkiller耳〟にアジャストして聴けば「お、まあまあだね」てな感じ。
この「Painkiller」を巡る議論、および70年代派か80年代派か、メタル・ゴッドとはどうあるべきか、そもそも彼らにメタル・ゴッドを求めるのか、といったJudas Priest論に関しては私も人並み以上にうるさいタイプで、まじめに語り出すと時間がいくらあっても足りないのでここでは踏み込まない。
本作の収録曲では、メタル・ゴッドとしての威信を取り戻さんと力みまくりのオープナーだけどあえて走らないところが渋い〝Judas Rising〟、大英帝国産正統派ヘヴィメタルの誇りを感じさせる〝Deal With The Devil〟、来たるシンガロングパートに向けた主題をギターソロパートのバッキングに滲ませて否が応でも盛り上げる〝Hellrider〟がお気に入り。(4月18日)
その4-Fortune「Making Gold」(1993)
スウェーデンのヘヴィメタルバンドの1st。
これも妻のゲーム収納ケースから発掘されたCDのひとつ。
よく覚えていないが、中高時代ではなく割と大人になってから買ったCDだと思われる。
ある種の名盤ガイドでは常連の作品で、メロディアス派の人々から愛されているのを知識としては知っていた。
しかし、私は社会人になってからこういう外連味のない正統派メタルをあまり熱心に聴かなくなっていたから、中古屋の均一棚などでサルベージしてちょっと耳を通し、そのまましまい込んでいたのだろう。内容ほぼ記憶になし。
という状態でこのほど向き合って聴いたけど、なかなか良いですね。
キーボードも使用されているけど、過度なキラキラや派手なコーラスによる装飾が薄い(コーラスそのものがないわけではない)実直なヘヴィメタルで、リリースされた93年当時としてもかなりオールドファッションな代物だったのではないだろうか。鼻が詰まったような声質で垢抜けない無個性派なヴォーカルは、80年代~当時の北欧ものでよく耳にした感じで懐かしい(今でもいるだろうけど)。
2曲目の〝Anonymous Lover〟のサビが「成増ラバー」と聞こえて、そういえばエロ本を平積みで展開していた成増の本屋さんは元気だろうかと思いを馳せるなど。
もう2回くらい聴けば曲が印象に残りそうだけど、さてどうするか、みたいな局面です。
ちなみに車で本作を再生中、暴走族風の改造を施した2ケツバイクが横をすり抜けていった。後部座席の奴(ノーヘル)が弁当を箸で食っていて、これにはマイッタ!(4月25日)