現行ドゥーム・ロックの王者。中心人物のJus Oborn(Vo, G)は88年にLORD OF PUTREFACTIONを結成。当初はドゥーム・デス・バンドだった。92年にTHY GRIEF ETERNAL、93年にETERNALへと改名し、正統派ドゥーム・メタルに変化。この前身3バンドの音源はRise Above Recordsから06年にリリースされた”Pre-Electric Wizard 1989-1994″で聴くことができる。ETERNALでデモを2枚発表後、Jusが後輩のTim Bagshaw(B)、Mark Greening(Ds)を誘って三人編成でELECRIC WIZARDの名で活動を開始。バンド名はBLACK SABBATH – “Electric Funeral”と”The Wizard”を組み合わせたもの。当時CATHEDRALのLee Dorianに気に入られ、Rise Above Recordsから95年に1st”Electric Wizard”をリリース。正統派ドゥーム・メタルといったサウンドだったが、96年に発表した2nd”Come My Fanatics…”のドラッグ影響下から生み出された狂気の重低音サウンドでシーンに衝撃を与え、”世界一ヘヴィなバンド”と称された。EP”Supercoven”(98)を発表後、Jusのドラッグ癖やほかのメンバーの警察沙汰によって99年まで活動停止。00年に3rd”Dopethrone”をリリースし、二度のアメリカ・ツアーを行う。02年に4th”Let Us Prey”をリリース。03年にTimとMarkが脱退(二人はLORD OF PUTREFACTIONのメンバーだったAdam RichardsonとRAMESSESを結成)。新たに元13~SOURVEINのアメリカ人ギタリストLiz Buckingham(G)らを迎えて4人編成となり、5th”We Live”をリリース。その後はJusとLiz以外のメンバーは流動的となる。07年に6th”Witchcult Today”をリリース。08年には来日直前に解散した為キャンセルとなったHIDDEN HANDの代わりという形で初来日を果たした。10年に7th”Black Masses”をリリース。12年にMark Greeningが復帰し、8枚目となるアルバムをレコーディングするも、同年、デビュー以来蜜月の関係にあったRise Above RecordsがELECTRIC WIZARD名義での新作リリースを弁護士を通じて差し止めていることが発覚。未だ和解は報じられていない。13年にJusがオランダのRoadburn Festivalにキュレーターとして参加し、”Electric Acid Orgy”を開催。14年にMarkが再脱退。バンドは新たにSimon Poole(Ds)と”Electric Acid Orgy”にも参加したアメリカのドゥーム・パンク・バンドSATAN’S SATYRSのClaythanasことClayton Burges(B)を迎え、8th”Time To Die”を自身で設立したレーベルWitchfinder Recordsからリリース(流通はSpinefarm Records)。2017年に9th”Wizard Bloody Wizard”をリリース。その後Claytonが脱退(理由は明かされていない)、HAWKWINDのHaz Wheatonが加入。2018年6月に待望の再来日を果たした。
1.Stone Magnet 04:54
2.Mourning Prayer 05:07
3.Mountains of Mars 03:46
4.Behemoth 08:55
5.Devil’s Bride 06:31
6.Black Butterfly 08:19
7.Electric Wizard 09:52
8.Wooden Pipe 00:08
Total:47:32
前身バンドETERNALで活動していたJus Oborn(Vo/G)が後輩のTim Bagshaw(B)とMark Greening(Ds)を誘って結成。Lee Dorianに気に入られてRise Above Recordsと契約。サイケデリックな浮遊感を織り交ぜた初期Black Sabbath影響下のヘヴィでスローなドゥーム・メタルをプレイ。次作の狂気の超重量級ドゥーム/スラッジとは異なるがクオリティは高くドゥームロックのひとつの理想形と言っても差支えがないほど。歌詞は黒魔術や魔女、ベヒモスなどお決まりのものから、「希望も未来も職もない」とドゥームのルーザーな精神性もしっかり宿っている。アートワークはCATHEDRAL作品でお馴染のDave Patchett。
1.Return Trip 10:03
2.Wizard in Black 08:24
3.Doom-Mantia 08:49
4.Ivixor B / Phase Inducer 08:48
5.Son of Nothing 06:44
6.Solarian 13 08:00
Total:50:48
「世界一ヘヴィなバンド」としてその名を地下音楽界に轟かせた大傑作にしてDOOM史上に残る名盤2nd。前作ではまっとうなドゥーム・メタルをプレイしていたが、本作で完全に壊れた。ドラッグ影響下から生まれたという極端にブーストした低音、ブルージィなギター・ソロ、ローファイなドラム、混沌としたジャム…音のすべてが快楽、酩酊に振り切っている。Doom/Stoner/Sludgeにおけるヘヴィさの定義を塗り替えた1枚。BLOOD FARMERSから受け継がれたであろう、「悪魔の墓場」や「人喰族」といったB級ホラー映画等からの引用もハマり過ぎていて堪らない。日本盤帯の「やらなくてもトリップできるドラッグ」というタタキに偽りなし。
1.Supercoven 13:13
2.Burnout 18:38
Total:31:51
イクとことまでイッてしまった傑作EP。SLEEP – “Dopesmoker”に匹敵する大名盤。リリース元はファンジンで有名な英国のBad Acid Records。明らかに普通ではないテンションから放たれる一触即発のアシッド・ジャム、角砂糖を口に含んだまま歌っているようなJusの歌声も完全に狂気の沙汰。後にSouthern Lord Recordsからボーナス・トラック2曲を追加して再発されたが廃盤に。現在プレミアの付いた状態。ペキンパー5号のインタビューで再発計画が明らかになったが続報は無い。
1.Vinum Sabbathi 03:06
2.Funeralopolis 08:43
3.Weird Tales: I. Electric Frost II. Golgotha III. Altar of Melektaus 15:04
4.Barbarian 06:29
5.I, the Witchfinder 11:03
6.The Hills Have Eyes 00:47
7.We Hate You 05:08
8.Dopethrone 20:48
Total:01:11:08
前作発表後、Jusがドラッグでアレになったり、他のメンバーが警察の厄介になったりしたため99年までの活動休止を経て発表された3rdフル。”Come My Fanatics…”、”Supercoven”の狂気のドゥーム/スラッジ路線は変わらないが、練りこまれた楽曲構成でより”聴かせる”作風。#1″Vinum Sabbathi”、#7″We Hate You”などは彼らのキャッチーな側面がよく表れている。#3″Weird Tales”は15分に及ぶ三部構成の大曲。#2″Funeralopolis”はスローに始まり中盤でテンポ・アップする所謂”Electric Funeral”タイプの曲で、本作屈指のキラー・チューン。名曲#8″Dpethrone”は10分25秒以降は無音(再発盤ではカットされている)。
1. …a Chosen Few 06:35
2.We, the Undead 04:29
3.Master of Alchemy: I. House of Whipcord II. The Black Drug 09:23
4.The Outsider 09:18
5.Night of the Shape 04:02
6.Priestess of Mars 10:02
Total:43:49
02年発表の4th。前作の延長線上にあるウルトラ・ヘヴィな#1”…A Chosen Few”で幕を開け、続くハードコア調のアップテンポ・ナンバー#2“We, The Undead”、ヴァイオリン、ピアノを使用したアンビエントなインストゥルメンタルの#5”Night Of The Shape”、中近東風のメロディが耳に残る日本盤ボーナストラック#7”Mother of Serpents”など多彩で実験的な曲が目立つ。音像は歪んでいるものの整合性が取られており、耳には馴染みやすいのだが、散漫で捕らえどころのない印象。
1.Eko Eko Azarak: I) Invocation II) Ritual 10:48
2.We Live 07:47
3.Flower of Evil a.k.a. Malfiore 07:29
4.Another Perfect Day? 08:04
5.The Sun Has Turned to Black 06:25
6.Saturn’s Children 15:08
Total:55:41
Label: Rise Above
前作発表後、Tim Bagshaw(B)とMark Greenings (Ds)が脱退(EWの前身バンドLORD OF PUTREFACTIONのメンバーだったAdam RichardsonとRAMESSESを結成)。新たに元13~SOURVEINのLiz Buckingham(G)、元IRON MONKEY他、現CRIPPLED BLACK PHEONIXのJustin Greaves(Ds)、Rob Al-lssa(B)が加入し四人編成となった5th。気違いじみた歪みは無くなり、Jusの歌声もクリーン・ヴォイス中心で、哀愁、切なさが漂う楽曲が目立つ。#1は黒魔術の呪文を連呼するオカルティックなナンバー。アップ・テンポの#4はJusの歌声も相まってメロディックドゥームパンクとでも形容したくなるような1曲。黙示録的な寂寥感に満ちた#5、#6の美しさも特筆に価する。ヴィニール盤限定で”Tutti I Colori Del Buio”、2006年の再発以降のCDにはボーナス・トラック”The Living Dead at Manchester Morgue”が収録されている。
1.Witchcult Today 07:54
2.Dunwich 05:34
3.Satanic Rites of Drugula 06:06
4.Raptus 02:13
5.The Chosen Few 08:19
6.Torquemada ’71 06:42
7.Black Magic Rituals & Perversions: I. Frisson des Vampires II. Zora 11:01
8.Saturnine 11:04
Total:58:53
Label: Rise Above
Justin Greaves (Drums)が脱退(ケンカ別れ)。黒魔術の儀式で1日7時間叩いていたというShaun Rutterが新たに加入。WHITE STRIPESとの仕事で知られるLiam Watson をプロデューサーに迎えた07年に発表した6th。Jusの偏愛する70年代のユーロ・ホラーを想起させるオカルティックで妖艶なドゥーム・ロック。ロンドンのToerag Srudioでヴィンテージ機材を使用してレコーディングされたというレトロな音質はヘヴィさを求めるファンには物足りないだろうが、元来持っていたポップさ、キャッチーさが際立ち、前作で見せた哀愁のメロディも遺憾なく発揮されている。シーンに与えた影響力という点では2ndにも匹敵するのではないだろうか。#7の”I. Frisson des Vampires”パートはジャン・ローラン監督の映画『催淫吸血鬼』(1971年)のサントラからのカバー。
1.Black Mass 06:06
2.Venus in Furs 06:22
3.The Nightchild 08:02
4.Patterns of Evil 06:30
5.Satyr IX 09:58
6.Turn Off Your Mind 05:51
7.Scorpio Curse 07:31
8.Crypt of Drugula 08:49
Total:59:09
Label: Rise Above
BがTas Danazoglouに交代。3年ぶりにリリースされた7thフル。全曲10分以下の曲を収録したバンド史上初のアルバム。前作同様Toerag Studioでレコーディングされているが、音像はダーティでノイジー。一本調子だったJusの歌声もメリハリが効いている(#2は加工も相まって最初聴いたときLizが歌っているのかと思った)。キャッチーなコーラスを配した#1、同名小説を題材にした妖艶で退廃的な#2、メロトロンを使用した#3、シンガロングできそうな#7とコンパクトに纏められたキャッチーな楽曲中心で、非メタル、ハードコアのロック・リスナーにもおすすめできる1枚。
1.Incense for the Damned 10:42
2.Time to Die 07:49
3.I Am Nothing 11:31
4.Destroy Those Who Love God 03:14
5.Funeral of Your Mind 07:08
6.We Love the Dead 09:05
7.SadioWitch 04:10
8.Lucifer’s Slaves 08:40
9.Saturn Dethroned 03:07
Total:01:05:26
Label: Spinefirm
前2作とは比べ物にならないほどヘヴィになった8th。Mark Greenings(Drums)の復帰も関係しているだろうが、決して原点回帰や自己模倣ではない。漆黒の憎悪と極彩色の狂気渦巻くアシッド・ロックはどの過去作とも異なる陶酔を与えてくれる。ミニマルなリフを軸とした#1~#3の閉塞感と逼迫感は過去の作品にはなかったスタイルだ。続くドキュメンタリー”The Devil Worshippers”から引用したインストゥルメンタル#4は十分ヘヴィでありながら清涼剤のように感じられる。若干テンポを上げキャッチーなコーラスを配した#5で前半を締め、後半に入ると2nd~3rd期を思わせるズブズブのドゥームソング#6、前作、前々作路線のキャッチーでオカルティックな#7とキャリアの総括的な曲が並ぶ。BassとしてクレジットされているCount OrlofはJusの変名。プロデューサーはJusが務め、マスタリングはKhanate他で知られるJames Plotkin(Platkinとミススペルで表記されている)。
1.See You in Hell 06:38
2.Necromania 06:14
3.Hear the Sirens Scream 08:44
4.The Reaper 03:14
5.Wicked Caresses 06:43
6.Mourning of the Magicians 11:18
Total:42:51
Label: Spinefarm
Mark Greening (Drums)が再脱退(前作が発売された頃には既にいなかった)。Simon Poole (Drums)とSATAN’S SATYRSのClayton Burgess (Bass)がレコーディングに参加した初のアルバム(リリース後に脱退)。プロデュースはJusとLizが務めている。どヘヴィだった前作と打って変わって初期Alice Cooperのような毒々しいポップさにMC5、The Stoogesのような荒削り感、タイトルもSabbathパロだし、とここで単なる原点回帰、バックトゥベーシックであると断じてしまうのはドゥームの王者に対してあまりに不敬なので違う角度から見てみましょう。COUGHのアルバムをプロデュースしたり、最近の若手もしっかりチェックしている(フックアップと言ってもいいようなチョイス)Jusだけに「昔は良かった。今のバンドは(ry」という老害的なスタンスの持ち主ではないように思えます。EWも大きく貢献した00年代半ばに起きた70sリヴァイヴァルを通過した若手たちが独自の解釈で新たなサウンドを創り上げている現在、そしてそんな“若手“の代表格であるSATAN’S SATYRSのClaytonが参加しているだけに、彼らからの刺激を受けた結果なのではないでしょうか。「小僧共、中々やるな。おれたちはこうやるぜ!」という気概のようなものを感じます。
1.Eternal – Magickal Childe 06:02
2.Eternal – Electric Funeral (Black Sabbath cover) 04:29
3.Eternal – Lucifer’s Children 09:47
4.Eternal – Chrono-naut (Phase I-IV) 16:01
5.Thy Grief Eternal – Swathed in Black 06:59
6.Thy Grief Eternal – On Blackened Wings 08:59
7.Thy Grief Eternal – Outro 01:22
8.Lord of Putrefaction – Descent 03:48
9.Lord of Putrefaction – Wings over a Black Funeral 04:47
10.Lord of Putrefaction – At the Cemetary Gates 06:05
11.Lord of Putrefaction – Dark Prayers 05:07
Total:01:13:26
Adam Richardson (Guitars, Vocals, 11PARANOIAS, RAMESSES), Gareth Brunsdon (Drums, MT. PLACID, ex-11PARANOIAS, ex-LORD OF PUTREFACTION, ex-HEXED), Gavin Gillingham (Guitars, MT. PLACID, ex-THY GRIEF ETERNAL)
Label: Rise Above
ELECTRIC WIZARDの前身バンドLORD OF PUTREFACTION、THY GRIEF ETERNAL、ETERNALの音源を集めた編集盤。LORD OF PUTREFACTIONは現RAMESSESのAdam Richardson(Vo, G)が歌うドゥーム・デス。THY GRIEF ETERNALではJusがデス声で歌っており、とても同じ人物とは思えない。ETERNALはELECTRIC WIZARDに最も近いスタイルで、Jusもノーマル声で歌っている。#2はBLACK SABBATH – “Electric Funeral”のカバー。
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