今年もいろいろありました。本が出たり!本が出たり!本が出たり!
『酩酊と幻惑ロック: ドゥームメタル・ストーナーロック・スラッジコア・ディスクガイド 1965-2022』好評発売中でございます。お買い上げいただいた皆様には、誠にありがとうございます。皆様にお楽しみいただければ幸いです。また、改めて杉本氏や東京キララ社の皆さん、本著に関わってくださった全ての皆様に、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。
下記は2023年の項があったら入れていたであろう作品です。順不同。
Dozer – Drifting in the Endless Void
スウェディッシュ・ストーナーの重鎮による15年ぶりのアルバム。初期のブリブリストーナーではなく、「Beyond Colossal」(08年)路線の、ポストハードコア〜スラッジメタルの趣あるストーナーロックを展開。メンバーによる別バンドGreenleafと併せて「ストーナー」を拡張し続けている人たちです。
「Beyond~」はリリース当時、ストーナー下火の時期で、ちょっと変わったことをやろうとしてるんだな、と思いながら聴いていたんですが、今となっては「ポスト・ストーナー」的だ。『酩酊と幻惑ロック』に入れてよかったかもしれん。
Miss Mellow – Miss Mellow
ドイツはミュンヘンの4人組による1st。bandcampのプロフィールの「Psychy, Funky, Krauty and Stoner Sounds」そのままであります。70年代のディスコミュージック(まったく詳しくない自分が直感的に「ディスコだ」と認識するレベル)とストーナーやクラウトの要素が違和感なく溶け込んでいます。3曲目”Miss Mellow”、4曲目”Update”では日本語の歌唱/音声も飛び出す。
Psychic Trash – Psychic Trash
デトロイト拠点のデュオによる1stフル。Kylesaにオーセンティックなドゥーム/スラッジ、ハードコアパンクを注入したような新旧ないまぜスラッジメタル。ノイジーでバイオレント、ドロドロなのにキャッチーってのがいいですね。
Blood Ceremony – The Old Ways Remain
カナダのヴィンテージリバイバル、モダンレトロの立役者的バンドによる5th。従来の路線を引き継ぎつつ、より広範な70年代ロックを取り入れた作風で、オリジネイターとしての懐の深さを見せつけたといってもいいではないのでしょうか。個人的にはハードな曲よりもポップな曲が耳に残る。4曲目”Lolly Willows”が好き。
GIÖBIA – Acid Disorder
シンセサイザー奏者擁する、イタリアのneo-psychedelia acid-rock riffersによる6thフル。Rifferとは。HawkwindやOzric Tentacles、Amon Duulなどの名前が頭に浮かぶクラウト~スペースロック。Acid Rock(ヘヴィサイケ)の重さとグルーヴも存分にあって、(宣伝文やbandcampのタグにはないけど)ドゥーム、ストーナーとして聴いても旨味十分。
Goat – Medicine
Goat、いいですよね。私は70年代エクスプロイテーション映画のサウンドトラックみてえだなと思いながら聴いてます。聴きながら散歩すると楽しい。
Avenade – Our Raging God Unknown to Us
Matt Hawkinsなる人物によるソロプロジェクトの4枚目?のアルバム。ストーナー、アトモスフェリックなスラッジ~ドローンとニューメタル、スクリーモの融合という、私のような「ニューメタル上がりのドゥーム/ストーナー愛好者」は、前者を聞いてる時の快感と、後者を聴いてる時の如何ともし難いむず痒さ(だって青春だもの……)が同居していて情緒をかき乱されます。00年代を総括したスタイルと言えなくもないか。絶対30代だろ。
GADFLY – Aparanik
カナダはバンクーバーのバンドによる1st。ブルージーなドゥームにパンキッシュなストーナーと70年代のプログレ、オカルトロックに民族音楽(bandcampによるとペルシャの音楽)をミックスしたとでも表現すればいいのか、ユニークなことをやっています。Blood Ceremony + Goat(&ペルシャ音楽IN)か?Rocket Recordingsあたりからリリースされたら跳ねそう。
Church of Misery – Born Under A Mad Sign
このバンドに関してはもう流動的なラインアップを楽しみましょう。メンバーが何回代わろうがドゥームの理想系を提示し続けているのは間違いないのだから。
東羊(Tō Yō) – Stray Birds From the Far East
今年のフジロックにも出演した東京のバンドの1st。70年代の日本のフォークやニューロックが現代でGoatと出会ってしまった!今年リリースされたWitch(Zambia)の新作とも精神的にリンクしそうな時代超越型サイケデリックサウンド。ライブ観たい。
Mammatus – Expanding Majesty
カリフォルニアのバンドによる8年ぶり、5枚目のアルバム。Roger Dean感のあるジャケの世界観を長尺(15~20分超)で展開するサイケデリック/プログレッシヴ/エピックなストーナーロック。戦士でも魔術師でもない、吟遊詩人の視点で描かれた叙事詩。いい映画を一本観た気分になれる。
Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs Pigs – Land Of Sleeper
英国を代表するバンドになりつつあるPigs×7の4thフル。Black Sabbath、HawkwindからAcrimony、Orange Goblinへと繋がる90年代ドゥーム/ストーナーを現代の土壌で継承したノイジー/サイケデリックな作風。腕力で薙ぎ倒すようなパワフルさと、緩急の巧みな構成が光っている。Bonnacons of Doomのメンバーがゲスト参加した”The Weatherman”のような変化球の曲も良い。ラストを飾る”Ball Lightning”は今年の私的ベストドゥームソング。
Ruff Majik – Elektrik Ram
Johni Holiday(Vo.、Gt.)を中心とした南アフリカのバンドによる4th。近年のQueens of the Stone AgeにThe White Stripesのエキセントリックな部分とわかりやすいドゥーム、ストーナー要素を付け足したイキのいいロックンロール。PTSDや依存症をテーマにしただけあって、バラードの”Chemically Humanized”など曲調も多彩になっているが、それにしてもこのテンションの高さよ。
Acid Magus – Hope is Heavy
南アフリカのバンドによる2nd。Ruff Majikとは同郷かつレーベルメイトで、5曲目”Dead Weight”にJohni Holidayがゲスト参加している。ゴリゴリのストーナードゥームとPink Floyd、Yawning Manなどプログレやデザートロックの浮遊感、抒情性が同居するモダン・ドゥーム/ストーナー。近しいのはKing Buffaloあたりだが、こちらの方がドゥーム/ストーナー特有のいなたさがあって、King Buffaloにハマれなかった人にもおすすめです。
Honorable Mention
AMPACITY – IV
Nepenthes – Grand Guignol
Giants Dwarfs And Black Holes – In A Sandbox Full Of Suns
Witch – Zango
Uh Huh & Lammping – In My Mind
Lucid Sins – Dancing In The Dark
Lil Yachty – Let’s Start Here
Azarak – DIGGIN’
Death Valley Girls – Islands in the Sky
Yawning Man – Long Walk Of The Navajo
Queens of the Stone Age – In Times New Roman…
King Gizzard and the Lizard Wizard/PetroDragonic Apocalypse; or, Dawn of Eternal Night: An Annihilation of Planet Earth and the Beginning of Merciless Damnation
Stoned Jesus – Father Light
Acid King – Beyond Vision
Doombia – Doombia Vol.1